「赤毛のアン」の故郷 ──プリンスエドワード島

島の郊外に建つ典型的な農家。こうした昔ながらの切妻屋根を持つ建物は、年々少なくなっている。農耕に適した肥沃な土地は島の面積の6割ほどで、主にジャガイモが栽培されている。収穫高はカナダ国内の3割を占める。
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 カナダ南東部、セントローレンス湾に抱かれるような位置にあるプリンスエドワード島。この島を中心に構成されるプリンスエドワードアイランド州は、カナダで最も小さな州だ。面積は約5660平方キロで、愛媛県とほぼ同じ大きさ。人口は約14万人で、愛媛県の10分の1ほどである。住民はイギリス系が8割を占めて最も多く、フランス系、オランダ系が続く。

 この島はよく「世界一美しい島」と称される。ゆるやかな起伏を持つ丘が幾重にも連なり、そこに切妻屋根の民家、白い尖塔を持つ教会、コケラ板で覆われた納屋がポツンポツンと建っている。絵本のページを開いたような牧歌的な景観が、現代人の心を癒やしてくれるのだろう。

 30年前、当時写真家になりたかった私は、カナダを横断する旅の途中でこの島と出会い、風景に一目惚れした。そしてここでしばらく暮らしながら、多くの写真を撮った。第二の故郷といえるほど、私にとって大切な場所だ。

 かつてプリンスエドワード島に入るには、飛行機か船を使うしかなかった。1997年に島と本土を結ぶ全長13キロの橋が完成し、今では陸路で行き来することもできる。多くの日本人は、飛行機で州都シャーロットタウンの空港に降り立つが、お勧めは船。海を挟んで南側にあるノバスコシア州のカリブー港から出ているフェリーに、車を乗せる。甲板で心地よい海風を感じ、少しずつ近づいてくる赤土の島を眺めていると、旅情がかき立てられる。

国道6号線沿いにある見晴台から、フレンチリバー村を望む。島を象徴する景観の一つだ。この島には100を超える漁港があり、どこも入江の地形をうまく利用している。
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 島では、いくつもの感動的な光景が待ち受けている。シャーロットタウンを出発し、郊外の素朴な道をのんびりとドライブする。国道224号線を北東に向かって車を走らせると、朝焼けに染まった農場や、湖へとつづく赤土の道などが現れては消え、飽きることがない。かつて出版した写真集「PASTORAL(パストラル)」の表紙を飾った作品は、この道沿いの風景から生まれた。

 スタンレーブリッジ村を過ぎ、さらに北東のパークコーナー村へと車を走らせる。この辺りには、さらに魅力的な風景が広がっている。約5キロにわたって延びる砂州を一望できる草原、歴史ある家屋や小屋が建ち並ぶフレンチリバー村、海沿いに白い灯台がポツンと置かれたトライン岬と、毎年のように島の観光ポスターやガイドブックの表紙を飾る絶景が、次々と目の前に現れる。