太古の森に包まれる ──オンタリオ

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プリンス・エドワード・カウンティを代表するワイナリーの一つ、グランジ・オブ・プリンス・エドワード。歴史ある建物の一階にはテイスティングルームとショップ、地下に大きな樽貯蔵庫がある。果実の旨味を活かしたロゼも人気が高まっている。右は、ブドウの成育状況を見守る娘のマギー・グランジャーさん。

 ミネラル分が豊富で水はけの良い石灰質の土壌を持つこの地は、農作物の栽培にも適している。ブルー・ホイールバロー・ファームは、今年34歳になるアーロン・アームストロングさんが一から始めた無農薬農場だ。玩具会社でサラリーマンをしていた頃から、田舎のコミュニティーに溶け込み、自然の中で体を動かす仕事に憧れていたという。ここ数年、大都市で活躍している有名シェフが、良質な食材が採れるこの地で次々とレストランを開業している。そんなブームも追い風となり、今は15のレストランと契約するまでに至った。どのレストランにも、収穫してから20分以内に新鮮な野菜を届けることが出来るらしい。

1000の島を意味するサウザンド・アイランド。オンタリオ湖北東部からセントローレンス川にかけてカナダ側には現在、1864島があり、983島で人が暮らしている。1年中、水に沈むことがなく、90センチの木が2本生えていれば、一つの島と見なされるという。ガナノクエから出る5時間のボートツアーでは、ボルト城があるハート島に上陸することができる。ハート島はアメリカ側なので、日本人はパスポートが必要。
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 セントローレンス川が始まる場所に位置するキングストンは、古くから交通の要所として発達してきた。1841年、連合カナダ植民地成立の際は最初の首都となり、カナダ史のなかで重要な役割を果たしてきた街としても知られている。ライムストーン(石灰石)で出来た歴史的建造物が建ち並ぶしゃれた街並みは美しく、この日もたくさんの観光客で賑わっていた。

 東部カナダを代表する景勝地の一つ、サウザンド・アイランドを巡るツアーは、この街から30キロほど東にあるガナノクエが拠点となる。桟橋にはガナノクエ・ボートライン社が所有する3隻の真っ白なツアーボートが係留され、団体客の到着を待っていた。

 所要時間2時間半のボートツアーに乗船した。船はセントローレンス川を滑るように東へ進んでいく。グラインドストーン島が近づくと、周辺には大小たくさんの島が姿を現した。どの島にもポツンと別荘があり、なかには豪邸が建つ島もある。さながら住宅展示場を巡っているようで、建物を見ているだけでも楽しかった。

 ツアーのハイライトは、アメリカ側に建つボルト城だ。ニューヨークの最高級ホテルのオーナー、ジョージ・ボルトが、愛する妻のために建てた別荘。サウザンド・アイランド・ドレッシングが生み出された場所としても知られている。北米の地で、まるで中世ヨーロッパを彷彿とさせる景観と出会えたことが随分と新鮮だった。

この連載はカナダ観光局の提供で掲載しています。

吉村 和敏(よしむら かずとし)

1967年、長野県松本市生まれ。田川高校卒業後、東京の印刷会社で働く。退社後、1年間のカナダ暮らしをきっかけに写真家としてデビュー。以後、東京を拠点に世界各国、国内各地を巡る旅を続けながら、意欲的な撮影活動を行っている。自ら決めたテーマを長い年月、丹念に取材し、作品集として発表する。絵心ある構図で光や影や風を繊細に捉えた叙情的な風景作品、地元の人の息づかいや感情が伝わってくるような人物写真は人気が高く、定期的に全国各地で開催している個展には、多くのファンが足を運ぶ。近年は文章にも力を入れ、雑誌の連載やエッセイ集の出版など、表現の幅を広げている。作品集、写真展、テレビ出演等多数。2003年 カナダメディア賞大賞受賞、2007年 日本写真協会賞新人賞受賞、2015年 東川賞特別作家賞受賞。写真集に『プリンス・エドワード島』『「フランスの最も美しい村」全踏破の旅』(講談社)、『BLUE MOMENT』『MORNING LIGHT』(小学館)、『光ふる郷』(幻冬舎)、『あさ/朝』(アリス館)、『こわれない風景』(光文社)、『ローレンシャンの秋』(アップフロントブックス)、『林檎の里の物語』(主婦と生活社)、『PASTORAL』(日本カメラ社)、『Sense of Japan』(ノストロ・ボスコ)、『Shinshu』(信濃毎日新聞社)、『雪の色』(丸善出版)などがある。