「学生たちにはまず最初に言うんです。研究するということは、卒業するための条件の一つには違いないけれど、果たしてそれだけで終わっていいのか。研究業績に上下関係はない。研究は人生を大きく変える、未来を拓く。日本がどうなろうと、世界がどうなろうと、研究業績と英語力さえあれば、どこの世界でもやっていけるって。うちは、学生の研究がラボを牽引している主体なんだということと、学生がどんどん海外に出ていって世界を活躍の舞台にするんだってことを毎年繰り返し言っています」

 だから、森島研では、学部学生でも常に海外を意識した研究を志すことになる。国内、国外の学会で発表するのは基本で、デモを作ったり、最終的にはできるだけ高いレベルの雑誌に論文を通すべく全力を尽くす。卒業研究をしている8人の学部生全員が、SIGGRAPHにポスター論文を通した年すらあるそうだ。

 もっとも、ここまで「学生が主体」でやっていけるのは、分野自体の若さ、熱さ、そして、スピード感による部分も大きいだろう。

 それを象徴するのが「短期留学」だ。

 森島研の学生さんたちは、よく短期留学する。2017年度には数カ月単位で、6人の大学院生が海外の大学に赴いた。実は、これらは「留学」というよりも、共同研究の実施のための派遣、といった方がより実情にそぐう。

博士課程に在籍する山口周悟さん。
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 例えば、人の顔の正面写真から3Dの形状や質感を再現する手法を開発したのは、博士課程の学生、山口周悟さんで、去年、ロスアンゼルスの南カリフォルニア大学(USC)に3カ月滞在する中で、この研究を一気に完成させた。

 わずか3カ月の留学で、SIGGRAPHのような最先端の場に採択されるような研究を成し遂げるというのは半端ではない。通常なら、研究環境のセットアップをするだけで終わってしまうのではないか。滞在先の研究室でも、ある意味「お客さん」扱いされておしまい、というような期間だと思うのだが、少し話したところ、その期間で結果を出すのはむしろ当たり前のように感じているフシがある。「3カ月でSIGGRAPH論文」はたしかに素早い仕事だが、かといって特別なわけでもないというのだ。

第3回でも紹介した、写真1枚からその人の3D画像をつくる技術は主に山口さんの研究成果だ。(提供:森島繁生)

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