「かなり前ですけど、『のだめカンタービレ 巴里編』でオーケストラを指揮するシーンとか、『銀河鉄道物語』の3Dリメイクに使ってもらいました。ぜんぶ手描きだと完成までに1カ月かかるとして、3Dでやると1週間でできるくらい効率化されます。キャラクターも一度作れば使い回しができるし、口の動きも自動で付加できたり、影をつけたりもできます。あと、手描きだと作画から着色までもうワークフローが決まっててやり直しがきかないけど、こっちはいくらでもやり直しがきくと。トライアルアンドエラーができるっていうところも特徴ですね」

「のだめカンタービレ 巴里編」の指揮者の動作モデリングに使われた、モーションキャプチャーのアニメ風編集技術「MoCaToon」。森島さんが開発した技術だ。

 さらに他にも、頭髪演出ツール、影の演出ツール、ダンス動画編集ツール、弾性物体の運動表現ツールといったものを、歴代の学生さんたちが開発してきており、森島研のアニメ熱のようなものを示してあまりある。

「日本のアニメはやっぱり人気高いですし、あえてギクシャクしてるところに日本らしさというか、日本のジャパニメーションらしさっていうのを世界の人は感じ取っているわけですから、それは一つの価値ですよね。だから残さないといけないと思うんです。現状では、研究者のコミュニティと、現場でのクリエイターとの意識の違いがかなりあります。研究者がすごいことやっていても、現場は知らないじゃんとか。あるいは現場はすごく泥臭いことやってるけど、これ使えばすぐできるじゃんみたいなことがたくさんあったり。僕もだんだん歳をとって学会をオーガナイズするようになってきたので、研究者と現場のクリエイターを何とか橋渡ししたいなと思っています」

 森島さんは、今年の11月、東京で開催されるヴァーチャルリアリティの国際学会・展示会VRST(ヴァーチャルリアリティとソフトウェア技術学会)でも主催側に立つ。VRSTは、ある意味、SIGGRAPHよりもさらに尖った、新しいコンテンツ創造の息吹が感じられる国際学会・展示会だ。日本の「現場」と研究の最先端がどんなふうに出会うのか楽しみだ。

つづく

森島繁生(もりしま しげお)

1959年、和歌山県生まれ。早稲田大学先進理工学部応用物理学科教授。工学博士。1987年、東京大学大学院電子工学博士課程修了。同年、成蹊大学工学部電気工学科専任講師に。同助教授、教授を経て2004年、早稲田大学先進理工学部応用物理学科教授に就任、現在に至る。その間、1994~95年にトロント大学コンピューターサイエンス学部客員教授、1999~2014年に明治大学非常勤講師、1999~2010年に国際電気通信基礎技術研究所客員研究員、2010~2014に年NICT招聘研究員も務めた。1991年、知的通信の先駆的研究により電子情報通信学会業績賞を、2010年電気通信普及財団テレコムシステム技術賞を受賞。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、『天空の約束』(集英社文庫)、NHKでアニメ化された「銀河へキックオフ」の原作『銀河のワールドカップ』(集英社文庫)とその“サイドB”としてブラインドサッカーの世界を描いた『太陽ときみの声』(朝日学生新聞社)など。
本連載からは、ホモ・サピエンス以前のアジアの人類史に関する最新の知見をまとめた近著『我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち』(講談社ブルーバックス)をはじめ、「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめた『8時間睡眠のウソ。 日本人の眠り、8つの新常識』(集英社文庫)、宇宙論研究の最前線で活躍する天文学者小松英一郎氏との共著『宇宙の始まり、そして終わり』(日経プレミアシリーズ)がスピンアウトしている。
ブログ「カワバタヒロトのブログ」。ツイッターアカウント@Rsider。有料メルマガ「「秘密基地からハッシン!」」を配信中。

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