第3回 自分が活躍する映画もフェイク動画もCGで現実に

 SIGGRAPH(シーグラフ)とは、アメリカコンピュータ学会(ACM)の中でコンピュータグラフィックスなどを扱う分科会のことで、毎年、ロスアンゼルスを中心に開催される。「分科会」とはいえ、規模は超巨大で、CGのみならず、コンピュータゲームやメディアアートといった関連ジャンル、VRなどの新興技術をカバーし、研究発表だけでなく数々のデモが展示される。研究者にとっても、関連業界の人々にとっても、祝祭的なイベントだ。森島さんの研究室のメンバーは、SIGGRAPHをひとつの大きな研究発表の場として位置づけている。1994年の初参加以来毎年欠かさず学術的な貢献を続けてきた。1998年の研究は、技術的には大いに見るべきものがあると多くの人が納得しつつも、「ハリソン・フォード」の肖像権問題ゆえに発表できずに終わってしまった。

 事態が動いたのは、世紀の境目をこえた2002年のこと。

「フューチャーキャストシステム」を開発した森島繁生さん。
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「2005年3月に愛知で万博があるんだけど、世界の度肝を抜くような技術で何か新しいことをできないかって、広告代理店の電通の人たちから相談を受けたんです。その時にこの技術のことを話したら、観客の顔をその場でスキャンして映画に反映させられないかというんですね。でも、当時は、まだ画像作成のための計算速度だって追いつかないし、顔の位置や向きをきちんと合わせ続けるのも難しいし。それでも、彼らはすごい魅力的なビデオをつくって、コンペを通しちゃったんですよ。それで、いつの間にか僕らもやらざるを得なくなって。でも、はたして間に合うんだろうかみたいな、そういう状況で始まったんですね」

 具体的にどんなふうに解決したのか。愛・地球博やその後のハウステンボスで体験した人が、ぼくの身の回りにいたので、後で聞いてみたのだが、スピーディに顔の形状をスキャンして、あっというまに自分が映画の中にいたことに一様に感動を覚えていた。森島さんが、ひとつの夢と語った通り、なにかそこには特別なことが起きているという感覚が強くあったようだ。

「当時、実現したシステムでは、カメラを7つも設置した測定装置のくぼみに顔を突っ込んでもらって、ストライプの光線を当てて、だいたい2分かけて3次元計測するんです。それで、その場で顔のCGを作るわけですが、当然、コンピュータの計算速度が追いつかないですから、いろんな工夫があって、例えば顔以外のところは全部あらかじめつくっておいたものです。だから、体のサイズは変えられないので、赤ちゃんが来ても、体の細い女の人が来ても、みんな同じガタイで出てくるっていう。ちょっとそれはもう、どうしようもない妥協点でしたけどね」

 また、この時点では、表情などはやはりそれぞれの個性が反映されず、共通したものだったそうだ。森島さんに言わせるとジェネリックな(類型的な)表情。