第2回 「本人らしい顔」のCGが難しいこれだけの理由

早稲田大学先進理工学部応用物理学科でCG技術を研究する森島繁生さん。
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「顔のCGでは、皮膚の質感というのが大事なんです。従来のゲーム等では、ランバートモデルという単純で高速な計算法が使われていました。でも、それだとちょっと皮膚っぽくなくなってしまうんです。実際の皮膚は、少し赤みが染み出したようなかんじになるんですが、それを出すには、いったん皮膚の内側にまで透過して入った光が、そこで散乱して別のところから出てくる、表面下散乱という現象を計算しなければなりません。忠実に計算するとものすごく時間かかるし、リアルタイムで実行できないので、それをどうやって高速に行うかという手法を開発しました」

 よくゲームなどで表現される3Dのリアルな顔で、形とはしてリアルなのだけれど、なにか冷たい感じがする、まるで樹脂でできた人形のように感じる造作というのがなかっただろうか。原因の一つは陰影の付け方の問題で、森島さんたちは皮膚の下で散乱してからまた表に出てくる光を高速シミュレーションする方法を開発して解決した。

「高速で動かせればゲームエンジンに組み込めるので、ゲーム会社のゲームタイトルにも採用されています。例えば、コーエーさんの『真・三國無双6』という作品では、出てくるキャラすべて、すぐやられちゃうような雑魚キャラまで含めて、ぜんぶ、この方法で顔の陰影を計算しているんです。最後までプレイするとエンドクレジットに僕と当時学生だった久保尋之さん(その後奈良先端大学院大学助教)の名前が出てきます」

 さきほどのパッチタイリングが警察との共同研究で実用化を目指したように、こちらはゲームでの実用を目指した。現実に活かせる応用が前提の「応用物理学」の中の研究室であって、また「人々に感動や幸福をもたらす技術を世に送り出す」というモチベーションを忠実になぞった結果だ。

「うちの学生には、研究成果を机上の空論に終わらせず、実用化までをゴールとするように言っています。論文を投稿して終わりじゃなくて、アプリケーションを実装して特許出願したり、企業への売り込みをして実用化したり、一連のプロセスを経験する学生も多いんです」

 森島さんはさらりと言ったけれど、それが、ぼくがこの研究室で最初に出会った光景、つまり、夕方遅い時間に、粛々とそれぞれの作業に打ち込む学生さんたちの姿と呼応するのだろうと想像できた。これについてはまたあらためて。

 ここで「顔」とは離れるけれど、「ゲームエンジン」の話が出てきたところで、さらに「応用物理学的」な話をしておこう。