第3回 宮原ひろ子(宇宙気候学):宇宙からの視点で地球の住み心地を考える(対談編)

(撮影:青木計意子)
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関野 地球に生命が生まれた時には銀河宇宙線の影響はありましたか。

宮原 そこはすごくおもしろくて、最近「宇宙生物学」という分野があります。水、水素、メタン、アンモニアの4つの物質を混ぜると生命の素のアミノ酸ができます。でも混ぜるだけではだめなんです。ガスは中性なのでくっつかない。でも、それぞれの物質をイオン化(電離)させて電気を持たせると、あっという間にくっつきやすくなるのでいろんな物質ができます。イオン化させるのは紫外線が得意ですが、銀河宇宙線も得意です。

 アミノ酸がいつ、どこでできたかというのはまだ解けていない謎ですが、ひょっとしたら惑星ができる前からあったかもしれないという話があります。「パンスペルミア仮説」というものです。まだ太陽が生まれる前で紫外線が降り注いでいない時代、宇宙空間をただよう塵の中でどうやってアミノ酸ができたかというと、銀河宇宙線が材料物質をイオン化したからだろうと考えられています。そうしてできたアミノ酸が、地球の住み心地が良くなった頃に落ちてきて、そして生命がつくられたのではないかというんです。宇宙生物学という分野も比較的新しい分野で、いま本当に面白くなってきている分野だと思います。

3つのバリアに守られた地球は生命にとって特別な星

関野 こうやって地球という星について考えてみると、地球というのがいかに特殊で、だからこそ我々は地球で生きていられるのだなと感じます。人類が向かおうとしている火星と比較すると、火星では考えられない条件がいくつも揃っている。

宮原 まずは大気ですよね。大気は成分も大事ですが、まずは大気そのものが充分にあることで、宇宙から来る放射線のバリアになってくれている。

関野 火星移住が難しい理由のひとつは、宇宙から来る放射線です。火星は大気が薄いので、地上では放射線が強すぎて、男性も女性も子孫を残せない状態になります。だからもし火星に行けたとしても、放射線を避けるために穴蔵で生活するしかありません。地球とはまったく違う厳しい環境です。

宮原 地球には、大気だけでなく、地磁気というバリアもありますね。

関野 地球は鉄をたくさん持っているんですよね。これが、地球の内部で動くことで地磁気が作られている。鉄というのが、生命が住める星になれるかどうかを握っている気がします。

宮原 火星の場合は、最初のころは磁場があったけれども、熱源になる放射性元素が地球と比べてかなり少なかったから、かなり早い段階で冷えきってしまったんですよね。それで、磁場を作れない星になってしまいました。

 もう一つ、放射線を遮ってくれているバリアがあって、それが太陽風です。だから、地球の生命は、大気・地磁気・太陽風という3つのバリアによって守られている、と言えます。それらがあるおかげで、私たちは快適に過ごせるんです。

太陽の黒点(SOHO/NASA)
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