第3回 宮原ひろ子(宇宙気候学):宇宙からの視点で地球の住み心地を考える(対談編)

宮原 こういった長いスケールでも、宇宙が地球に影響しているという話があるんです。太陽系は天の川銀河の中をゆっくり旅していますが、銀河の中は、星が爆発して死んだばかりの所とか、塵やガスが密集している分子雲とか、危険地帯がけっこうあるんですね。だから地球が誕生してから46億年の間にいろいろな所を通過してきた可能性があります。地球史を振り返ってみると、けっこう大きな変動があるんですね。たとえば地球全体が凍ってしまった時とか。いろんな種類の生き物が一気に減ってしまった時代とか。説はもちろん色々あるんですが、宇宙からの影響があったかもしれないという話もあります。

(撮影:青木計意子)
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関野 6億年ぐらい前と22億年ちょっと前に「全地球凍結」というのがありましたね。宇宙が影響していたとすると、どういう説明になるんですか?

宮原 例えば私たちが住んでいる天の川銀河に、隣のアンドロメダ銀河が接近してきたりすると、重力の作用で星の材料がとても密になる場所がでてきて太陽よりもかなり重たい星がたくさん生まれます。そういう重たい星は寿命が短いんですね。だから、星の死骸もたくさん増えるので、銀河宇宙線が増えた可能性がある、だから寒くなったのではないか、というのがひとつの説です。星の材料が密集した分子雲自体も増えていたわけですから、そこに太陽系が突っ込んだ可能性もありますね。そうすると地球に塵が長期間降り注ぐことになります。全球凍結が起こった頃はまだ単細胞生物だけでしたから、辛うじて生命は生き延びました。

 ほかにも銀河の「腕」を通過したときに寒冷化が起こっているというデータもあります。「腕」というのはまさに、星がたくさんあるところですね。その星たちが死ぬと、そこが銀河宇宙線の源になります。

関野 宇宙スケールで見たときに、太陽系の終わりはどのようなものなのでしょうか?

宮原 まず確実にくる「終わり」としては太陽の死があります。核融合の材料が尽きてくると、太陽は終わりを迎えます。赤くて巨大な星に膨張して地球に接近してくるので、灼熱の状態になります。でもあと50億年ぐらいは大丈夫そうです。それよりも前に、アンドロメダ銀河が衝突してきてしまうという話があって、ひょっとしたら40億年くらいできてしまうのではないかと考えられています。銀河はスカスカですから、銀河同士の衝突といってもモワッとぶつかってじわじわと1つの銀河に合体していく感じです。そのとき運が悪いと、ひょっとすると地球が太陽系から弾き飛ばされる可能性もゼロではないかもしれませんね。地球は岩石でできているので、太陽と違って「寿命」というものはないのですが、もし弾き飛ばされてしまうと太陽の光の当たらないところを一人旅する格好になるので、生命は打撃を受けるでしょうね。

生物の誕生・絶滅・進化にも宇宙が影響している?

関野 巨大な隕石も、壊滅的になることがありますね。6500万年前にユカタン半島に隕石が落ちて恐竜が滅んだと言われていますが、ものすごい噴煙で気温が下がったんですよね。

宮原 そうですね。大量の塵で大気が濁ってしまって、それで太陽の光がさえぎられて寒冷化したというのが大きかったようですが、300メートルを超える巨大な津波が発生したことも、大きかったようですね。

 実は、巨大な隕石の落下にも、太陽系の外からの影響があったかもしれないという話があるんです。太陽系が銀河の中を移動しているうちに分子雲のようなところに突っ込んでしまうと、彗星の軌道が乱されて、地球に落ちやすくなってしまうというのです。美星スペースガードセンターの二村徳宏さんという方の研究なのですが、ユカタン半島に巨大な隕石が落ちて恐竜が滅びる前からもう既に隕石が増え始めていた、ということが地層からわかったんです。もし本当だとすると、ユカタン半島に落ちた巨大隕石は偶然じゃなかったのかもしれないし、すでに寒冷化が始まっていたところへ単にとどめを刺しただけかもしれない。全部宇宙のせいにしたら怒られるかもしれませんが。

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