第3回 宮原ひろ子(宇宙気候学):宇宙からの視点で地球の住み心地を考える(対談編)

関野 はるか遠くの宇宙から降ってきた銀河宇宙線も雲の種になるんですね。

宮原 そうです。銀河宇宙線というのは、超新星残骸といって、太陽のように核融合をして光っている天体が死んだあとの残骸から飛んでくるんですが、とてもエネルギーが高いので、太陽から飛んでくるプラズマとは違って、地表にまで影響を及ぼすことができるんです。雲は地表から高度10kmぐらいまでの範囲でできるんですけど、植物とか人間が出している汚染物質は高さ3kmぐらいまでしか上昇しないんですね。でも銀河宇宙線は上から来るので、高度3kmよりも上空で汚染物質の役割を果たすことができます。例えば雷雲をつくる空気の塊は地面がかなり温まった時の強い対流でできるので、上空10kmまで届きます。そういう雲には銀河宇宙線が影響を及ぼせるのではないかと考えています。

太陽フレア(SDO/NASA)
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関野 より高い所の方が銀河宇宙線の影響が強そうな気がしますが、銀河宇宙線が作るイオンはどういう分布になっているのですか?

宮原 銀河宇宙線は大気の粒に衝突して破壊していくことで、イオンをたくさん作っていきます。作られたイオンはさらに別の大気の粒にあたってそれを破壊します。たった1粒銀河宇宙線が飛んでくるだけでも大量のイオンが作られるんですね。ただ、そうこうするうちに1粒あたりのエネルギーは小さくなりますから、いずれはその連鎖が止まります。一番イオンがたくさん作られるのは成層圏(雲ができる対流圏の上層、高度10~50km)で、対流圏に限って言えば上空ほどたくさんイオンが作られているという格好になっています。

天の川銀河とアンドロメダ銀河が接近すると地球が凍る?

関野 太陽の活動がもたらした影響として、小氷期のお話がありました。氷期とか氷河期とか、いろいろな名前がでてきてよく混乱が起こるんですよね。私が今は氷河期なんですよと学生などに話すと、「えっ、今氷河期なんですか」という反応が多いです。

宮原 そうなんですよね。いま南極とグリーンランドに氷がたくさんありますよね。ですから、氷河期なんです。氷河時代とも呼びます。ただ、そういった時代の中にも少し変化があります。地球が太陽の周りを回る軌道がちょっと楕円になっている加減で、9万年寒くなって(氷期)、1万年暖かくなる(間氷期)というのを繰り返しています。私たちはいま間氷期にいて、縄文時代から現在までがその暖かな時代です。暖かくなってから実は1万2000年たってしまっているので、そろそろ寒冷化するタイミングなのですが、人間がメタンや二酸化炭素を大量に大気中に出してしまったので、もう氷期は来ないかもしれないという議論もあります。

関野 よく、「それでは氷河期ではない時代はあったんですか」「いつあったんですか」と聞かれます。

宮原 たとえば恐竜が生きていた時代がそうですよね。今よりも格段に暖かくて、植物も繁栄していて、それが恐竜の大型化につながったのですよね。でもいったん大型化してしまうと、突然寒くなったりしたときに大打撃を受けてしまいますね。

関野 寒くなると、まず植物が減って、そしてそれを餌とする草食獣が減って、そのために雑食や肉食獣も滅びていきます。一番大きな影響を受けるのは大食漢の大型動物です。だから恐竜はほろんだのですが、私たちの先祖はその頃ジネズミみたいな小さな存在で、昆虫などを食べていたので、生き残ったのです。さらに森に入ってサルに進化しました。

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