第3回 宮原ひろ子(宇宙気候学):宇宙からの視点で地球の住み心地を考える(対談編)

 太陽活動などが地球の気候に及ぼす影響を研究する「宇宙気候学」は、20年ほど前から始まった比較的新しい分野で、武蔵野美術大学准教授の宮原ひろ子さんはこの分野のパイオニアです。宇宙からの視点で見た地球の環境について、関野吉晴氏と語り合います。

太陽の活動と地球の天気

関野 インド洋や太平洋の雲や、アフリカ、インドネシア、日本の雷も27日周期とのお話がありました。27日周期というのは太陽の自転ですよね。それがなぜ地球に影響するのですか?

宮原 黒点が27日周期で地球側に向くからです。黒点の寿命はものすごく大きいものだと3カ月くらいになるときもありますが、多くは約2週間と短いんです。でも、黒点はなぜか太陽の同じ面に出やすいので、それで27日という周期が出続けるんです。

宇宙気候学の専門家、宮原ひろ子氏(奥)に質問する関野吉晴氏。(撮影:青木計意子)
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関野 地球の天気を太陽の活動から予測できるようになるのでしょうか?

宮原 太陽の活動のリズムが雲や雷に見えているので、将来的には天気予報に組み込める可能性があるのではないかと考えています。黒点が発生して太陽フレアが起こったときに、太陽フレアから放たれたプラズマが何日後に地球にぶつかりそうか、そしてどういう影響が出そうか、という予測があって、「宇宙天気予報」と呼ばれているんですが、それはすでに運用が始まっています。人工衛星や送電網への影響などをあらかじめ予測するためです。東京都小金井市にある情報通信研究機構(NICT)が、宇宙天気予報を毎日出しています。銀河宇宙線がどれくらい減るかもある程度予測ができます。ですから、宇宙天気予報と気象予報をつなげることが将来的にはできるかもしれないと思っています。

 私の研究では、太陽の影響はまず赤道のあたりの天気に強く現れて、それからゆっくり日本の方にも影響が伝搬してきているように見えています。太陽の表面からのプロセスを全部つないでいくと、例えば2週間予報、1カ月予報などの長期予報がより精度よくできるようになるのではと思っています。

銀河宇宙線がなぜ雲の種になるのか?

関野 銀河宇宙線が大気にはいってきてイオンをたくさんつくると雲ができるというお話がありました。汚染物質のようなものが雲の種になるということですね。

宮原 はい。実は、純粋な水蒸気だけで雲をつくるのはとても大変なんです。何百パーセントという濃い水蒸気が無いと、雲はできません。でも電気を帯びた微粒子があると、雲ができやすくなるんです。昔の人が雨乞いで火をたいたのもあながち非科学的ではなくて、汚染物質を巻き上げるので、それが種になって雨が降るんです。最近は気象操作というのが、普通にされるようになってきているのをご存知ですか。北京オリンピックの開会式で気象操作が行われたのは有名な話ですね。風上で汚染物質をまくことで、会場に雨が降らないようにしたのです。

関野 それなら、台風が起こった時に汚染物質をばらまいて操作することはできないのですか?

宮原 アメリカが汚染物質をまいてハリケーンを消そうと試したけど効かなかったという話がありますね。水蒸気が集まって降るか降らないかというときには効くんですけど、台風では難しいようです。

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