第3回 宮原ひろ子(宇宙気候学):宇宙からの視点で地球の住み心地を考える(提言編)

 小氷期にはどれぐらい気温が変わったのでしょうか。それは木の年輪の幅から調べられます。平均すると今より0.6℃程度低かったと言われてきましたが、最近の研究で、地域差が大きいことがわかって、最大で2~2.5℃下がっていたことがわかりました。

 なかでも日本は影響が出やすい地域でした。大阪府立大学の青野靖之先生の研究ですが、京都に残っている日記に書かれたヤマザクラの開花日から調べたところ、マウンダー極小期では2.5℃くらい気温が低かったことがわかりました。

気温が2℃下がるとどうなるか

 では、平均気温が2℃下がるとどうなるのでしょうか。1991年のピナツボ火山の噴火の翌年に、日本では2℃くらい気温が下がって、2年間ほど影響がありました。小氷期はその状態が数十年とか数百年続くということです。

 最大の影響は作物が育たなくなることです。ピナツボの噴火の後、日本ではお米が不足して、タイから輸入したりしました。人間は寒さをがまんできても、植物は「何℃以上の日が何日続けばどれぐらい成長できる」というふうに気温で決まっているので、夏が短くなるとその日数分収穫が減ります。

 気温が低下した小氷期には不作と呼ばれる年が2倍に増え、食糧不足で栄養状態が悪くなり、ヨーロッパでは伝染病等で数百万人単位の死者が出ました。

日本では小氷期に雨が増えた

 面白いのは降水なんです。気温は当時、ほとんどの場所で、大なり小なり下がっていました。でも、雨は、増えるところもあれば乾燥するところもある、というふうに場所によって全く異なるのです。

 小氷期に日本でどうなっていたのか調べるために、伊勢や奈良などの古い木を分析してみました。木のなかの酸素の同位体を調べると、雨が増えていたかどうかがわかるのです。気候が乾燥すると葉っぱの裏の気孔が閉じます。反対に湿潤になると開いて外気を取りこみます。葉の中の水は基本的に根から吸い上げたものですが、外気がまざってくることで成分が変わってくるので、それを分析すると、空気が乾いていたか湿っていたかがわかるのです。

過去の降水を調べるため、古い木を分析して酸素の同位体を調べる。(画像提供:宮原ひろ子)
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 分析の結果、日本では小氷期に徐々に雨が増えていったことがわかりました。とくに小氷期の終わりごろに雨が大幅に増えて、そのあとは現在に向けて乾燥化が進んできたことがわかりました。温暖化すると雨が増えるというのが一般的なイメージですが、日本の場合は逆のデータが出ました。

太陽活動の低下によって地球の気候が変化するのはなぜ?

 それでは、太陽活動が低下すると、なぜ地球の気候が変化するのでしょうか。これはまだだれも説明できていません。

 太陽から来ているのは光であって熱ではありません。地球が暖かいのは、太陽の光が地面に当たって熱になって、じわじわと大気を暖めるからです。ですから、もし太陽から届く光の量が増えれば、発生する熱の量も増えて暖かくなります。ところが、太陽の活動が活発になっても、光の量はほとんど増えないのです。増えるのはおよそ1平方メートルあたり1ワットで、これは気温にするとおよそ0.05℃です。これでは気温が2.5℃も下がることは説明できません。太陽活動が地球の気候に影響しないと長らく考えられてきた理由のひとつはこれです。

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