第3回 宮原ひろ子(宇宙気候学):宇宙からの視点で地球の住み心地を考える(提言編)
太陽活動や宇宙の環境が地球の気候に及ぼす影響を研究する「宇宙気候学」は、20年ほど前から始まった比較的新しい分野です。この分野のパイオニアである武蔵野美術大学准教授の宮原ひろ子さんに、宇宙と地球との関わりについて語っていただきます。
こんにちは、宮原です。
最近の天気予報は昔と比べてとても良くあたります。それは人工衛星ひまわりが毎日鮮明な雲の画像を送ってくれていたり、スーパーコンピュータの計算能力が上がったおかげです。でも、半年予報はまだ外れることも多いですし、来年や再来年の気候となるともはや予測は不可能です。
長期予報が難しいのは、太陽活動など宇宙からの影響がまだ解明されていなくて、予報に組み込まれていないからかもしれないと考えています。こういった研究は比較的新しくて、「宇宙気候学」と呼ばれています。宇宙と地球のつながりがわかれば、より長期的な視点、例えば46億年というスケールで、地球がどういった環境に置かれてきたのかも見えてきます。
まずは私たちにとって最も身近な天体である太陽の影響について見ていくことで、宇宙と地球との関わりについて探ってみましょう。
太陽活動は地球にどのような影響を与えているか?
普段なかなか意識することは無いと思いますが、太陽の活動にはリズムがあります。1年ごとの太陽の写真を並べてみると一目瞭然で、例えば1990年ごろはとても活発だったのが、1996年ごろにはとても弱くなり、そして2001年ごろにはまた活発になっています。だいたい11年くらいのリズムで変化が続いていますが、さらに長い数十年、数百年といった周期もあります。
私の地球永住計画
地球は、誕生から46億年間、宇宙の大きな環境の変化のなかで翻弄され続けてきました。実は宇宙には、死んだ恒星たちの残骸から出る放射線が飛び交っているのです。天の川銀河の中を旅する太陽系が、強い放射線を放つ危険地帯に接近してしまうこともあります。そんな危険にあふれた宇宙のなかで、生命はこれまで生き残ってきました。
太陽系を見渡した時、地球ほど住み心地が良く安全な場所はほかにはありません。地球の住み心地が良いのは、太陽からの距離がちょうど良く、暑すぎず寒すぎないから、というだけではないのです。地球がもつ分厚い大気と地磁気が、宇宙から降り注ぐ放射線を防ぐ傘の役目を果たしてきたのです。火星には、薄い大気があるだけで、磁気もほとんどありません。大事な傘を失った星への移住、本当に必要でしょうか。何のために必要なのでしょうか。ときには、宇宙という視点で地球を見下ろして、そこに住む生命たちがとるべき道について考えてみる、というのはいかがでしょうか。
宮原ひろ子
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