古代の航海と現代の航海の違い

関野 航海実験をやっていて難しいことは何ですか?

海部 原始的な舟を操るには、人がしっかりしていないといけません。ナビゲーションや安全性の確保などがとても重要です。夜も舟を進めないといけないので、その準備もしなくてはいけません。早く舟を完成させて、漕ぎ手たちが練習する時間をしっかり取りたいですね。

(撮影:青木計意子)
(撮影:青木計意子)
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関野 いつも思うんですけど、やっぱり昔の人の考え方は今と全然違うと思うんですね。時間の流れもほんとにゆったりしていたし。だからじっくりやってほしいです。それは成功ありきではなくて。成功しなきゃいけないと思うと、いろんなまずいことが起こります。だから失敗でもいい、着かなくてもいい。ただ昔の人はすごいなということが分かればいいと思います。

海部 おっしゃる通りですね。昔の人はそういう時間の流れでやっているはずだし。ぼくらはスケジュールに縛られていて忙しいけど、そうしないと運営できないから仕方ないんですね。ただ、漕ぎ手たちはそういうゆったりした時間の流れの中でできるような環境を作らないといけないと思っています。

実際に現地に行って、航海してみてわかることに意味がある

関野 シミュレーションでは、男5人、女5人いれば子孫が残せるということですけど、今回は女性は1人なんですね。

海部 過去のテスト航海では、1艘に女性1人のことが多かったですね。昔は船団で行ったのだと思いますが、今回は費用や安全確保の面から1艘だけです。2艘で行くと離れてしまった時に困るので。

関野 ぼくたちは2009~2011年にかけて「海のグレートジャーニー」として、インドネシアから石垣島まで縄文号とパクール号の2艘の帆船で来ましたが、推進力が倍以上違ったので大変でした。大きい方の船は寝られるし、薪が乾いているからすぐに火が付いて、ちゃちゃっとコーヒーを淹れられる。でも小さい船の薪は湿っていてなかなか火が付かないから、大きい船のクルーに「なんであいつらもたもたしているんだ」と言われる。そういう問題を起こさないようにローテーションを組んでいました。でも人間て面白いもので、大きい船に乗っちゃうと、小さい船の経験があっても「何やってるんだ、あいつら」って言うんですよ。覚えてないんです(笑)。

 それからインドネシアにはたくさんの民族がいます。ぼくたちはスラウェシ島でマンダール人と一緒に船を作って航海しました。お礼に配るために作ったTシャツを「インドネシア―ジャパン」というデザインにしたんですけど、いつの間にか「マンダール―ジャパン」に変わっていました。まるで江戸時代の藩みたいに民族意識が強いんですね。

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