第6回 海部陽介(人類学):人類はどのように日本列島にやって来たのか?(対談編)

(撮影:青木計意子)
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海部 ぼくらは3万年前の航海を復元しようとしているんですけど、もちろん3万年前の世界は見ることができません。でも、現地に行くということが大事ですよね。かつて彼らが見たのと同じ景色を見たり、その土地の人々の振る舞いを見ると、そこにはぼくが今までやってきた研究とは違う世界があって、とても意味があることだと思います。

丸木舟で黒潮を渡るには何が必要か?

関野 台湾の港からぼくたちは西表島に向かい、海部さんたちはこれから与那国島に向かうんですけど、その地域では南十字星と北極星が同時に見られます。ぼくたちは黒潮の流れと風を読み、真東に向かって行くと50時間後に西表島の港に着くという計算をして、南十字星と北極星のど真ん中を進みました。星を眺めながら、「こんなにやって来たんだ。おれたちすげーな」と思いました。

海部 僕らもなんとかして行きたいですね。

関野 でも、ぼくは「黒潮を渡る」というイメージじゃなかったんです。海部さんたちの実験で草舟や竹筏では渡れなかった、でも丸木舟なら渡れそうだというのがピンとこなかった。黒潮に乗っちゃえば速く進めると思っていたのですが…。それで海流の図をよく見たら、ぼくたちは最初にもう黒潮を渡っていたんですね。その後黒潮の東側をずっと進んでいたんです。

海部 黒潮にも強弱がありますね。

関野 後ろから熱帯低気圧が来ていたんですけど、ちょっと荒れたぐらいじゃないと走らない船だったのでちょうどよかった。3分の1の時間は風で走って、3分の1漕いで、3分の1は停滞ですから。

海部 ぼくらは帆船じゃなくて漕ぎ舟なので、風は敵です。

関野 いちばん怖いのは横波ですね。コロンといきますからね。

海部 練習しないといけないと思います。

関野 インドネシア、フィリピンの船にはアウトリガーがあるんですけど、台湾に来るとないのはなぜでしょう?

海部 なぜ台湾にないかはわかりませんが、アウトリガーがあると安定しますけど、万一ひっくり返ると起こしづらいという面もありますね。転覆させないくらい技術が高ければ、いらないのでは。

関野 丸木舟の厚みに苦労しているんですよね。

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