第6回 海部陽介(人類学):人類はどのように日本列島にやって来たのか?(提言編)

 ホモ・サピエンスは20万年ほど前にアフリカで誕生して、長い間アフリカにしかいませんでした。およそ10万~5万年前にいくつかのホモ・サピエンスの集団がアフリカの外へと移動し始め、やがて世界中に拡散していきます。彼らは新しい能力を持っていました。ヨーロッパに残る壁画のように、芸術に繋がるような、創造的な活動が行われました。音楽も奏でていました。音や絵を使いこなしていたことから、複雑な情報を伝えあっていたと考えられます。

 5万年前の時点でも、世界の半分の地域にしか人類はいません。アフリカ大陸とユーラシア大陸です。残りの地域は、ホモ・サピエンスによってはじめて進出されたんですね。これを見ると、ホモ・サピエンスは何ができる人類で、それ以前の人類には何ができなかったかが見えてきます。原人や旧人ができなかったことは何ですか? そう、海を渡ることです。

 ジャワ原人の化石がみつかったのはインドネシアのジャワ島ですが、彼らは海を渡っていないのでしょうか? 実はこの海域は浅くて、かつてはスンダランドと呼ばれる大きな陸地でした。東南アジアの大陸部とつながっていたので、海を渡らなくても行けたのです。その後なぜ島になったかというと、暖かくなったからです。過去260万年間は氷河時代で、氷期と間氷期を繰り返し、そのたびに海面が上がったり下がったりしていました。今は地球温暖化で海面が上昇していますが、寒くなると海面は下がります。なぜなら、氷が拡大すると海水量が減るからです。

 人類が大きな海を渡ったのは約5万年前からで、そのころオーストラリア大陸に初めて現れたことがこれを示しています。ホモ・サピエンスはやがて帆のついた大型の船で太平洋上の島々に進出していきました。

 もうひとつ、原人や旧人は寒さが苦手でした。人類はサルの仲間で、もともと熱帯性の動物ですから。

 防寒服や暖かく機能的な住居の工夫によって寒さに適応したホモ・サピエンスたちは、シベリアに進出し、陸続きだったアラスカからアメリカ大陸に入っていきました。「アメリカ大陸を最初に発見したのはだれですか?」と聞かれて「コロンブス」と答えちゃだめなんですよ。最初に発見したのはアメリカ先住民たちですからね。教科書には間違っていることがたまに書いてありますから、注意しましょう。

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