微生物と人類が共生していく未来について、長年醸造や発酵を研究してきた小泉武夫さんと関野吉晴さんが語り合います。

微生物とは何者か

関野 ぼくは人間に興味があって、人間はどこから来たのか、他の動物とどこが違うのか、どこに向かっていくのだろうかと考えてきました。微生物はどこから来て、何者で、どこへ行くのでしょうか。微生物と微生物ではない生き物はどこが違いますか。

小泉武夫氏(撮影:青木計意子)
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小泉 微生物は小さな生き物のことです。微細で、ほとんど単細胞です。

 一番大きな微生物はキノコ、カビ類の糸状菌です。

 麹菌(コウジカビ)、クモノスカビ、ケカビも微生物です。酒、みりん、味噌、醤油を作る有用な麹菌は日本にしかいなくて、日本の国菌に指定されています。

 ミジンコやユーグレナ(ミドリムシ)は、利用する場合は微生物に入れますが、分類学的には甲殻類や原生動物です。

 バクテリオファージ(ウイルス)は分子の世界に入っていくくらい小さな存在です。

 微生物は非常にたくさんいて、1日にひとつ新種が見つかっていると言われています。

 人間の腸内には約1.2キログラムの微生物がいます。体内にいっぱいいるのだから、われわれは微生物の塊ともいえます。歯垢には特に多いので、微生物学者にとってキスとは「愛情と微生物の交換」です。交換するとお互いに強くなれるんです。

関野 教科書には「微生物学」と「細菌学」がありますが、違うものですか。

小泉 微生物の中に細菌が入っています。ものすごい種類があって、善玉菌・悪玉菌がいます。

関野 善玉菌による「発酵」と悪玉菌による「腐敗」とは、微生物側から見れば同じことですか。

小泉 発酵は人間の役に立つ場合を言います。腐敗菌と病原菌はほぼ同じです。ただ、善玉・悪玉というのは人間の都合。エネルギーの摂り方の違いで、どちらも子孫を増やそうとしているだけです。微生物は常に戦争していて、人間と似ています。

 クサヤの中にもたくさんの微生物がいて、新島にはクサヤのつけ汁を使った民間療法があります。何十種もの抗生物質があるのと同じです。

関野 サルの世界では高さや空間、昼夜などで棲み分けをしますが、微生物はそういうことはないのですか。

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