甘いものはお酒になります。酵母という微生物が、糖分を分解してエネルギーとエチルアルコールを作ります。すると酵母の体の中にエチルアルコールが一杯溜まって生きていけません。微生物はアルコールに弱いんです。それで溜まったアルコールを外に出したものがお酒。だからお酒なんて酵母の小便だとも言えるわけで、そう考えると人間とほんとによく似ています。

 カビも身近な微生物です。コウジカビは味噌や醤油を作ります。日本は昔から発酵文化が発達した国で、平安時代には4種類の醤油(大豆と小麦から作る醤油、魚醤、肉びしお、くさびしお)を作っていました。

 アオカビは代表的な抗生物質のペニシリンを作る菌です。人間は抗生物質によって手術ができるようになりました。ここでも、私たちは微生物に助けられているのです。

(撮影:青木計意子)
[画像をタップでギャラリー表示]

 微生物は自分を守ると同時に、自分の仲間以外の微生物を殺す遺伝子を必ず持っています。発酵したら腐りにくいでしょう。牛乳に乳酸菌を入れておけばヨーグルトになって日持ちします。180年前の山羊のチーズを食べたこともあります。それは、微生物が自分の子孫を残すために、発酵食品の中に腐りにくい物質を置いていくからです。

 それから微生物は子どもをつくるのが非常に早い。人間は妊娠して10カ月で子どもを産みますけど、大腸菌では早いもので13分です。だから爆発的に増えていくわけですね。このように微生物というのはなかなか隅に置けないし、実は人間よりも遥かに高度な性質を持っているとも言えるわけです。

微生物は超能力者だ

 2017年に『超能力微生物』(文春新書)という本を書きました。驚くべきことがここに書いてあります。

 北海道の有珠山で分離した菌は113℃でも死にません。納豆菌は煮沸しても死にません。われわれは熱湯に手を入れたらやけどをしますが、彼らはしません。たんぱく質が変性しないからです。耐熱胞子を持っています。そういうような超能力を微生物はたくさん持っているわけですね。

 上空10kmの成層圏にもものすごい微生物がいます。何を食べているかというと、われわれの自動車から出て、上昇して行った酸化窒素やイオウです。イオウ細菌、チッソ細菌です。

 水深6000~7000メートルの海底1平方センチメートルにかかる圧力は大変なものですが、微生物はうようよいます。

 ヨルダンの死海のような飽和的な塩分濃度のところにも微生物がいます。脱水されることなく、なぜ生きていられるんだろう? 不思議ですね。

 南極には凍らない不凍微生物というのがいます。

次ページ:FT(発酵技術)革命が地球永住のカギ

この連載の前回の
記事を見る

この連載の次の
記事を見る