中村 昔に戻るということではなくて、有機物は有機物として大事にしよう、ぐるぐる循環させようということです。技術は人間が人間らしく生きること。新しい技術に江戸時代や縄文時代の循環型の考え方を取り入れることはできます。

関野 電気がなくてもぼくは生きていけますが、今は自然から電気を作れるし、環境を傷めつけないような科学の力は使った方がいいと思います。

中村 科学や技術を否定することはありません。大事なのは自分自身の世界観をもつことじゃないかな。それはひとりひとりがもつものですが、私は私なりに生命誌をやってきた自分の世界観があります。その中でやりたいこと、やったほうがいいこと、やってはいけないことがあります。みんながそういうものをもつことが今大事なんじゃないかしらね。そして少しだけ手間をかけて生きることでしょう。

38億年の歴史から学ぶ

関野 想像力ということで中村さんがすごく評価している人間として、宮沢賢治や南方熊楠がいますね。

中村 宮沢賢治は科学でものを考え、生活に生かそうとした人で、あの時代には理解されなかったけれど、百年以上たった今読むとすごいことを考えていました。熊楠もそうです。そういう人たちって、歴史の中にいろいろいらっしゃるんじゃないですか。空海もそうですね。歴史に学ぶことは大事ですね。根本のところに戻って今の状況を考えると、学ぶことがいっぱいあると思います。

関野 温故知新ですね。

中村 38億年ありますからね。ずーっと見ていかないと。

探検家の関野吉晴氏。(撮影:青木計意子)
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関野 最初の生命がなければ私たちはいないことや、人類が生まれてから700万年の歴史を背負っていることを思い出さないといけないですね。ものづくりの基礎である縛る、結ぶ、縄をなう、編む、織る、削る、ホゾ、練る、撚る、火のコントロールなどは、すべて新石器時代にできていました。現代人はスマホを使っていますが、それは先人たちの積み重ねで今ここにあるものなんです。

中村 38億年の生命の歴史がゲノムの中に入っているのと同じように、文化の中には先人の歴史が入っていると考えればいいんでしょうね。

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