第4回 中村桂子(生命誌):人間は生きものの中にいる(提言編)

 生物学者として長年生きものを研究している中村桂子さんは26年前、生きものをみつめ、研究し、表現し、考える場であるJT生命誌研究館を立ち上げました。ゲノム解析によって明らかになってきた生きものの歴史「生命誌」と、人間がこれからも生きものとして地球に住み続けるために必要なことについて語っていただきます。

JT生命誌研究館館長の中村桂子氏。(撮影:青木計意子)
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 こんにちは、中村です。

 私は、人間が「生きものとして暮らす」という約束をすることが、地球永住のカギになると考えています。

 地球の生命の歴史の中で人間はどこにいるのでしょうか。もちろん、生きものの一つとして仲間たちの中にいます。けれども現代社会で暮らす私たちは、生きものたちの上に人間がいると思っているのではないでしょうか。

ゲノムからわかった生命の歴史~生命誌

 地球は多様な生きものがいる星です。これまでに調べ、名前をつけた生きものは百数十万種ですが、未知のものを含めるとおそらく数千万種がいるでしょう。バクテリアも人間もあらゆる生きものはDNAを持った細胞でできていて、共通の祖先を持っています。少なくとも38億年前には共通の祖先細胞が生まれていたことがわかっていて、現存する生きものはすべて38億年の歴史を体の中に持っています。

私の地球永住計画

 地球は生きものの星です。人間の星ではありません。ですからここに住み続けたいと思ったら、「生きものとして暮らします」という約束をすることでしょう。

 地球に生きものが誕生したのが38億年ほど前とされています。以来この星のありようはさまざまに変化しました。大気中に最初は存在しなかった酸素が大量に生じたこと、全球が凍結するほど低温になったこと、巨大隕石が衝突したこと・・・このような事件が次々と起きましたが、それでも「生きものが絶えてしまう」ということはありませんでした。「地球が生きものの星である」という所以です。

 ところで人間がつくる現代社会は、38億年も続いた生きものが持つ知恵を忘れて機械の世界をつくり、それこそが人間らしい生き方だと勝手にきめています。これでは続いていけそうもありません。ここで生きものが持つ知恵に眼を向け、そこから学び、生きものの中で人間だけに与えられた「想像力」を活かした「創造力」を発揮したらどのような世界になるか。それを考えてみたいと思います。

中村桂子

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