第1回 クマゼミとの衝撃的な出会い

クマゼミ 写真=腰本文子
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 ところが、クマゼミは子どもがかんたんに採集できるような、低い場所には止まらない。木のいちばん高い所にしか止まらないんです。東京にいるアブラゼミやミンミンゼミとは、ぜんぜん格が違って、棹を何本かつなげて長くする捕虫棒を買ってもらい、精一杯腕を伸ばしてネットインを試みましたけど、採れたためしがありませんでした。たまに地面に落ちている半死半生のクマゼミを見つけると、ありがたがって厳かな気持ちで拾い上げたものです。そのときの指に伝わってくる、セミの胴体がかすかに震える感触が今も忘れられないですね。

──当時、クマゼミのほかに、印象的な昆虫との出会いはありましたか。

 めったに出会えないんですが、静岡県の山地に生息する北方系の希少種、エゾゼミやコエゾゼミも出会うとすごくうれしい昆虫でしたね。それからチョウでは、黒い紋付きの着物を思わせる翅を持つモンキアゲハ。とびきり大型の南方系のアゲハチョウで、当時はアオスジアゲハともども東京では見ることができない種類でした。

 今では温暖化の影響か、アオスジアゲハは東京で普通に見られ、モンキアゲハやクマゼミも東京に分布を広げていて、めずらしい存在ではなくなりました。特段の気高さが感じられなくなっちゃったのが残念です。

 でも、伊豆で過ごす夏休みの体験を通して、この虫はこういう環境を好んで生息しているんだ、とか、こんなおもしろい行動を見せるんだ、などと、ただ採る楽しみだけでなく、一歩踏み込んで観察して、昆虫の生態そのものについて興味を持つ、いいきっかけになりました。

アオスジアゲハ 写真=腰本文子
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