高田さんが、「既に問題が起こっているかもしれない」というのには、訳がある。マイクロプラスチックを通じて生体内に運ばれるかもしれない化学物質のいくつかは、内分泌撹乱物質、いわゆる環境ホルモンだ。90年代に話題になった頃には、体に入るとたちどころに影響があるかのような騒がれ方をしたけれど、そこまで極端なことではないにしても、ひょっとするとじわじわと効いているかもしれないという議論がある。

「ヨーロッパでは、成年の精子数を調べる疫学調査が大規模に行われていて、それによると近年かなり精子数の減少が起こっているといわれています。ただ、それが何によるのか、因果関係は分かっていません。でも、内分泌撹乱物質、環境ホルモンがいろんなところでプラスチックとして使われており、僕たちがあんまり意識せずにそういうもので飲食をとっているということと関係あるかもしれない。同じことがマイクロプラスチックに吸着された物質でも起こっていたり、起こっていくことが心配されているんです」

海のプラスチックゴミから検出される代表的な化学物質。海中の添加剤の量は、プラスチックが増えれば当然増える。また、ある範囲内に限れば、汚染物質の量はプラスチックが増えても変わらないが、プラスチックがあることで、汚染度が低く生物が多い遠隔地へ運ばれたり、海底に沈んでいた汚染物質を海中へ戻したりして、人間への影響が拡大する可能性が懸念されている。(画像提供:高田秀重)
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 結局、健康被害の直接証拠はない。

 けれど、かなり実験室レベルでの知見が蓄積され、有害物質の生体への蓄積(海鳥など)も確認されて、黒に近い灰色になってきている。今後、20年間、マイクロプラスチック問題を放置すれば、海に流れ込んだプラスチックの量はトータルで10倍にもなるという試算もあり、その際、それこそ「実験室レベル」の高濃度汚染の海域も出てくるだろう。

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