第4回 博学多才な鳥類学者はなぜ、どのように誕生したのか

 1973年に有史以来初の噴火があり、川上さんが調査隊の1人として訪れた1995年と2004年は、噴火後の島の生態系の推移を調べる目的があった。

2004年の西之島。(写真提供:川上和人)
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 順当に行けば2014年前後にまた調査を行う手はずになっていたのだが、なんと2013年、記憶にも新しい大規模な噴火が起き、到底、調査ができる状況ではなくなった。

 この時の噴火は結局2015年11月まで継続し、大量に吐き出された溶岩のせいで、0.3平方キロメートルに満たなかった島の面積は10倍近くに広がった。旧西之島由来の土地で現在残っているのはわずか0.01平方キロメートル以下だという。

2013年12月から2014年12月にかけての西之島の変化。(出典:国土地理院ウェブサイト、協力:アジア航測千葉達朗氏 http://www.gsi.go.jp/gyoumu/gyoumu41000.html)
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 そして、2016年8月、警戒区域の範囲が狭められ火口から500メートルよりも外での活動が可能になったため、東京大学地震研究所を中心にした調査隊が結成されて、川上さんもメンバーとして島へと上陸した。

「なにを最初に感じたかというと、海鳥の存在感です。火山灰の上でもうカツオドリが営巣した痕跡がありましたし、若鳥がいました。アオツラカツオドリはまさに営巣中でした。オナガミズナギドリの巣穴のまわりには、火山灰の下に封印されてしまっているはずの土壌が掘り起こされて散乱していて、そういった土壌を植物が利用していました」

 火山が噴火してまだ2年そこそこの島で、まさに火山灰の上を、鳥たちは生活の場、繁殖の場にしていたのである。これは、実に興奮させられる。まったく生態系がリセットされた島で、はたして何が起きているのだろうか。

つづく

川上和人(かわかみ かずと)

1973年、大阪府生まれ。鳥類学者。農学博士。国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所 鳥獣生態研究室 主任研究員。1996年、東京大学農学部林学科卒業。1999年に同大学農学生命科学研究科を中退し、森林総合研究所に入所。2007年から現職。『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』(新潮社)、『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』『そもそも島に進化あり』(技術評論社)『外来鳥ハンドブック』(文一総合出版)『美しい鳥 ヘンテコな鳥』(笠倉出版社)などの著書のほか、図鑑も多数監修している。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、『天空の約束』(集英社文庫)、NHKでアニメ化された「銀河へキックオフ」の原作『銀河のワールドカップ』(集英社文庫)とその“サイドB”としてブラインドサッカーの世界を描いた『太陽ときみの声』(朝日学生新聞社)など。
本連載からは、ホモ・サピエンス以前のアジアの人類史に関する最新の知見をまとめた近著『我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち』(講談社ブルーバックス)をはじめ、「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめた『8時間睡眠のウソ。 日本人の眠り、8つの新常識』(集英社文庫)、宇宙論研究の最前線で活躍する天文学者小松英一郎氏との共著『宇宙の始まり、そして終わり』(日経プレミアシリーズ)がスピンアウトしている。
ブログ「カワバタヒロトのブログ」。ツイッターアカウント@Rsider。有料メルマガ「「秘密基地からハッシン!」」を配信中。