第4回 博学多才な鳥類学者はなぜ、どのように誕生したのか

 なるほど、飛ぶ能力を持った鳥だからこそ、環境の変化にすばやく応答する。鳥が飛行能力をひっさげて地球上に登場してから、きっとこういうことが数多く起きてきたのだろう。

「島の生態系って、常に移入と絶滅を繰り返しながら今の状態になったというのが特徴です。すごい時間をかけた移入と絶滅もありますし、それこそ場合によっては数十年単位で起こっている移入と絶滅も多分あります。いったん絶滅しても、また近くの島から来て戻ったりもすることで、全体としては安定した状態にあるイメージです。たとえば、3つ島があって、同じ種の集団が3つあって、どこかひとつが絶滅してもおかしくないし、過去に何度も絶滅している、と。でも、1つが絶滅しても、ほかの2つに保険があるからまた戻ってくるみたいな話です。でも、そこに人間がやってきて、この島にはヤギが入ってダメ、こっちは人が住んでダメとかなると、保険がなくなって、絶滅が連鎖していってしまうというのがありうるので、それを起こしてはならないということなんですよ」

 絶滅が起こっても移入が常に起きて全体としては集団が保たれる。そのためには、ローカルな絶滅をカバーする「保険」が必要だが、人間がかかわる環境の変化は、ローカルではなくなってしまうことが多々ある。つまり、絶滅の連鎖につながりかねない。それを防ぐためには、生態系の働き方をやはりしっかり見極める必要があり、鳥に着目するとその応答の速さから言っても理にかなっているのだ。

 そして、今、川上さんの目の前に、ダイナミックな「絶滅と移入」の生態系を見せてくれる格好のフィールドが現れた。そのフィールド自体は、川上さんは1995年と2004年にすでに訪れており、その時点でも「絶滅と移入」というテーマにとって重要な調査地だった。それが現在、さらに重要度を増し、世界でも稀に見る生態学研究上のホットスポットの1つになっている。

 島の名は、西之島。

 父島の西約130キロメートルに位置する火山島だ。海底から見ると、実に4000メートルもの高さがある巨大な山塊で、頂上の噴火口付近のみが頭を出している格好だ。

西之島。2018年1月17日撮影。(出典:国土地理院ウェブサイト http://www.gsi.go.jp/gyoumu/gyoumu41000.html)
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