第2回 鳥がいるといないとで、自然はどう変わるのか

 南硫黄島の調査は、東京都、首都大学東京、日本放送協会が協定を結んで行ったもので、川上さんは「鳥担当」として、2007年に続き2度めの参加となった。2017年の調査について、研究成果が出るのはこれからだが、すでに東京都が速報を出している。それによれば、ランの新種(ラン科クモキリソウ属の一種)、陸貝でおそらくは新種の1種(リュウキュウノミガイ属の1種)、かつて記録されたことがあるがその後見つからなかった昆虫(ミナミイオウスジヒメカタゾウムシ)など、発見が相次いだ。

 鳥類に関しては、ドローンを使った調査で、アカアシカツオドリの集団営巣地を国内で初確認した。以前から、崖上の木々に多数の個体がとまっているのは確認されていたが、今回の調査ではドローンを使うことで、近くからの撮影に成功し、営巣しているのが確認できたのだった。

アカアシカツオドリ。(写真提供:川上和人)
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 こんなふうに、新発見、再発見、営巣の確認などが相次ぐ調査というのは、滅多に立ち入ることができない隔離された無人島ならではだ。19世紀の博物学時代を思わせる。ちょっと血湧き肉躍るかんじがする。

 実際、この調査は、かなり本格的な探検風味がある。

「船をチャーターしていって、ゴムボートをおろして岸の近くまで行くと、あとはウエットスーツを着て泳いで上陸します。先に上陸した泳力のある隊員がロープを張ってくれるんですが、それでも、ヒヤヒヤですね。上陸したところは狭い海岸で、数十メートル先からは崖みたいな斜面です。そこにテントを張るので、眠る時にも落石対策にヘルメット着用ですね」

 写真を見せてもらったが、海から切り立った山の裾に、ほんの申し訳程度に顔を出している平坦な場所だ。満潮時にはかなりのところが沈んでしまうだろう。ごろごろと大きな石が転がっており、場所を慎重に選ばないと寝心地も良さそうではない。いや、ベースキャンプの居心地はともかく、はたして、この急峻な島をどうやって調査するのだろうか。

南硫黄島上陸時の様子。(写真提供:川上和人)
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