第4回 オーロラが見える寒かった地方で恐竜の巣を発見

「実は、本当に本当の最初の研究はアルバータ州のティラノサウルス類、ダスプレトサウルスなんです。ただ、一番最初にはじめたプロジェクトなのに、まだ終わっていないんです」

 これには驚かされた。

 連載の初回でも書いたように、宮下さんの最新の研究(博士研究)は、「脊椎動物のボディプランの起源」をめぐって、ヤツメウナギやヌタウナギを題材にしたものだ。

 恐竜研究を一段落させて、もっと大きなテーマに挑んでいるのだと理解していた。

 それなのに、まだ最初の研究が終わっていないのだ、と。

「ティラノサウルス類はアルバータから結構いっぱい出てくるんですけど、ティラノをやるんだったら、これを中心にしてやるといいって、フィルが個人的にお気に入りだった標本を僕が大学1年生の時にくれたんです。それがまだ終わっていません。それが終わらなかったがゆえに、博士研究が今のテーマになったところもある気がしています」

 フィリップ・カリー博士お気に入りの標本というのは、ぼくも見せてもらったことがある。宮下さんと一緒にロイヤル・ティレル古生物学博物館を訪ねた時に、収蔵庫のとある引き出しから「これ、すごい標本ですよ」と引っ張り出してくれたものだ。宮下さんにとっても思い入れのある標本だというのは分かったが、それは師であるカリー博士から研究対象として「譲られた」ものであり、宮下さんも魅了されてきたものだからなのだった。

 そして、研究が未完であることが、そのまま今の研究につながっているという謎の発言。ぼくは興味津々である。

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つづく

宮下哲人(みやした てつと)

1986年、東京都生まれ。博士(Ph.D)。2009年、カナダ、アルバータ大学を卒業。2017年、同大学で博士号を取得。2018年にアメリカ、カリフォルニア州の某大学に研究員として着任予定。恐竜好きが高じて16歳で単身カナダに移り住み、当時ロイヤル・ティレル古生物博物館の学芸員だったフィリップ・カリー博士のアシスタントとして学生時代を過ごす。近年は脊椎動物の進化を主なテーマとし、古生物学と発生生物学の両面から研究を行なっている。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、『雲の王』(集英社文庫)、NHKでアニメ化された「銀河へキックオフ」の原作『銀河のワールドカップ』(集英社文庫)など。近著は、ロケット発射場のある島で一年を過ごす小学校6年生の少年が、島の豊かな自然を体験しつつ、どこまでも遠くに行く宇宙機を打ち上げる『青い海の宇宙港 春夏篇秋冬篇』(早川書房)。また、『動物園にできること』(第3版)がBCCKSにより待望の復刊を果たした。
本連載からは、「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめたノンフィクション『8時間睡眠のウソ。 日本人の眠り、8つの新常識』(集英社文庫)、宇宙論研究の最前線で活躍する天文学者小松英一郎氏との共著『宇宙の始まり、そして終わり』(日経プレミアシリーズ)がスピンアウトしている。
ブログ「カワバタヒロトのブログ」。ツイッターアカウント@Rsider。有料メルマガ「秘密基地からハッシン!」を配信中。