第4回 オーロラが見える寒かった地方で恐竜の巣を発見

 結局、そのサイトで拾い上げた化石で、同定可能な標本はぜんぶで260点にのぼった。そのうち86がハドロサウルスの成体、20がその赤ちゃん、31がトロオドンだった。他にも、小型のティラノサウルス類、ワニに似たチャンプソサウルスや小さなトカゲ、何種かの魚、カメ、哺乳類などが見つかった。これらの動物たちが生きていた白亜紀、ここは曲がりくねった川があって、三日月湖や池があるような水辺の環境だったと堆積学的にも分かっており、そこにこのような構成の動物たちがひとつの生態系をなしていたというのが発見だ。

ハドロサウルスの営巣地の復元図。番号の内容は以下の通り。 1)営巣中のハドロサウルス類、2)ハドロサウルス類の幼体、3)幼体を襲うトロオドン、4)角竜(パキリノサウルス)、5)ティラノサウルス類、6)よろい竜、7)トカゲ、8)有袋類(哺乳類)、9)カメ、10)チャンプソサウルス、11)アミア類の淡水魚、12)ガー。(Adapted from Fanti & Miyashita (2009): illustration by Lucas Panzarin)
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 もう一点、緯度について。

「このあたり、白亜紀の後期にはかなり高緯度、北緯65度くらいのところだったと古地磁気の研究から分かっていますので、その高緯度で繁殖していたっていうのが大事な点です。それだけ高緯度で繁殖できるんであれば、恐らく北米を股にかけるような移動とかはしなくても済んだであろうと。だから、恐竜の行動様式の考察にもつながったんですよ」

 緯度が65度というのは相当なもので、現在の地図ならアラスカとシベリアが一番接近するところ、かつてベーリング陸橋があったあたりに近い。南緯なら南極大陸の一部にかかるくらいだ。夏至の前後には白夜とはいかずとも、完全に暗くならず薄明のまま朝になる緯度でもある。一方、夜が少しでも暗くなると、オーロラも見えたはずだ。

 薄明とオーロラの高緯度地帯で恐竜が営巣していたというのは、たしかにイメージの喚起力がある。論文自体、かなり引用されているし、また発表当時、メディアにもよく紹介された。

 個々の化石を同定することや、新種に出会った場合はきちんと調べて論文として報告することはとても大事で、その積み重ねの上にこういった総合的な仕事ができるようになる。この研究でいえば、ハドロサウルスやトオロドンを小さな歯などから同定できる知識が蓄積されており、宮下さんが熟知していたからこそできた。宮下さんはキャリアの初期に、広い研究の幅を身につけた。

 ぼくはそのように理解するわけだが、ここまで来て、宮下さんが面白いことを言い出した。