第4回 オーロラが見える寒かった地方で恐竜の巣を発見

 言葉だけでは分かりにくく標本の写真を見せてもらったが、ほんとうに断片で、ぼくの目にはとうていここから種の同定などできそうにもない。しかし、古生物学者は残された断片的な情報を引き出して比較して、謎に迫ろうとする。この場合、米モンタナ州で原始的な角竜の研究をしている研究者の論文を宮下さんが読んだことから事が動いた。似たところがあったので、そのキャスト(模型)を送ってもらって、「プレノケラトプスという角がはっきりせずフリルもほとんどない角竜の一種」と結論できた。

 20年来のミステリーが解けた。

 その結論を導くために必要だったのは綿密な計測と比較で、たぶん、ぼくらが古生物学者の仕事としてイメージするものだ。古典的な研究方法による探求といえる。

 一方、宮下さんが次に携わったのは、恐竜がいた古環境の復元や恐竜の営巣などにかかわる視野の広い研究。「アルバータ州白亜紀後期の高緯度の脊椎動物化石の集積。恐竜の営巣の証拠と脊椎動物の緯度勾配の証拠」みたいなタイトルだ。ちょっと要素が多くて、日本語に訳すとごちゃごちゃになるが、とにかく「アルバータ州でたくさんの脊椎動物の化石を見つけたこと」「恐竜の営巣の証拠を見つけたこと」「そこが高緯度の寒いところだったこと」などがポイントになっている。

 論文で扱っている化石の発見の物語を聞いた時、ぼくはなんとなく「アルバータ、化石と青春」みたいなイメージを抱いた。

「学部生の頃にとっても仲のいい友達と2人でおんぼろのバンを借りて、化石の出そうなところを走り回って、掘り当てたのをまとめて報告した論文なんです。みなさんアルバータ州の恐竜というと南部の恐竜州立公園なんかを想像すると思うんですが、僕らが行ったのはグランドプレーリーといって、かなり北のほうなんですよ。エドモントンから車で6時間ぐらいのところです。一緒に行った友だちは、当時大学院生で、その地域の地質をテーマにした博士論文を書いていました。知り合いから30、40年ものの古いバンを借りて、キャンプをしたり、人の家にやっかいになったりしながら探し回ったんです」

「アルバータ、化石と青春」。フェデリコ・ファンティ博士と。2007年撮影。(写真提供:宮下哲人)
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