第1回 恐竜から深海魚まで、世界で活躍する若き日本人研究者

 こう説明されると視野が広がる。見栄えのする巨大恐竜を愛でるのみならず(それだけでも充分に楽しいが)、ジュラ紀から白亜紀にかけてのアジアの古環境やら、超首長恐竜であるマメンキサウルス類の系統や進化史に思いをはせる。時空を超えて意識がぱーっと広がっていく。

 そして、胸が熱くなった。

 竜脚類という巨大な恐竜の標本と向き合って、観察し、測定し、つまりは「対話」して、新種として記載する。系統関係や進化史を鮮やかに描き出す。こういった営みは、やはり「すべての恐竜ファンの夢」だと思うのだ。それこそ「恐竜発見物語」的なノンフィクションに出てくる伝説的な恐竜ハンターやスター研究者たちにのみ許されてきたことではないだろうか。日本から海を渡った古生物研究者がまさにそれを行っているわけで、ぼくは宮下さんの存在をやはり、ぼくたちの「チャンピオン」のように感じる。

 これが2年前、博士課程の学生としての仕事である。

研究者、宮下哲人さんの魂の故郷とも言える東京上野の国立科学博物館にて。宮下さんはカナダに渡る前、恐竜を含む爬虫類化石、鳥類化石の専門家で科博の研究者である真鍋真さん(現・標本資料センター コレクションディレクター)の研究会に参加していた。(撮影協力:国立科学博物館)
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 では、その頃からすでに取り組んでいたはずの博士研究とはどのようなものだろうか。博士課程の学生が発表する論文は、のちに博士論文の一要素として組み込まれることが多いが、宮下さんの場合はどうか。

「初期の脊椎動物の進化というテーマで書きました。脊椎動物というのは、魚から哺乳類に至るまでそうですし、つまり、僕たちが日ごろ食卓で食べるようなサンマとかアジから、人間までが含まれる背骨を持った動物群ですね。これらすべてに共通するボディプランがあって、それらがどのようにして成立したのか。化石記録だけでなく、発生、つまり胚を見ることによって解き明かしていこうという論文です」

 脊椎動物のボディプラン、つまり、体の基本設計のようなものの成立を化石記録だけではなく、生きた生物の発生をつぶさに見ることで迫るという。

 では、どんな動物、とりわけ現生の動物を対象にするのだろう。