第1回 恐竜から深海魚まで、世界で活躍する若き日本人研究者

 宮下さんが記載論文を書いて新種として報告したチージャンロン(チージャンの竜)は、体長15メートルほどの草食恐竜だ。はたしてどんな生き物だったのだろう。

大型竜脚類チージャンロンの復元図。(Credit: Zhongda Chuang)
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宮下哲人さん。2017年11月に博士号を取得したばかりの気鋭の研究者だ。
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「竜脚類でも特別に首が長いマメンキサウルス類というグループです。体の半分が首なので、掃除機みたいなものを想像してください。これ、中国の重慶市で建設工事中に化石が見つかったんですよね。そのために地元で博物館まで建てていて、僕はそこに研究をしにいって新種だと明らかにしました。チージャンロンの細かい特徴でいえば、首の可動域が狭い。首が長いにもかかわらず、結構ガチガチに固めてあって首が動かしにくい恐竜ですね」

 マメンキサウルス類は、ジュラ紀のアジアの地層からよく出てくる竜脚類で、とりわけ首が長い。体の半分が首という、ちょっとありえないプロポーションをしている。草食恐竜なので、たくさん食べなければならなかっただろうから、胴の部分を起点にしてそれこそ掃除機を左右に振るように大きな面積をカバーして、届くかぎりの葉を食べていたというのが、よくある解釈だ。しかし、チージャンロンは、首の左右の可動域が、他の竜脚類に比べて狭かった。異形ともいえる長い首をしっかりと支持する構造(たとえば関節の固め方)と、長い首を持つことによる効率性とのせめぎあいの中で、チージャンロンなりの最適解が「ガチガチ」寄りだったということで、その背景にどんな環境があったのか興味深い。

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 宮下さんの研究では、マメンキサウルス類の系統関係や進化史にかかわるテーマを中心に検討している。

「ジュラ紀のアジアって、孤立した特殊な生物環境、古環境で、特に草食恐竜に限っていえば、結構固有の分類群が出てくるんです。そのうちの最たるものがマメンキサウルス類です。中国南部の、前期・中期ジュラ紀ぐらいの地層からかなりの数が発見されているんですが、後期ジュラ紀になるとほとんど見つからない。そして、白亜紀になると、ティタノサウルス類という別の系統の竜脚類が入ってきます。で、僕らが報告したチージャンロンは、後期ジュラ紀で、これまであまり見つかっていなかった時期です。これが出てきたことによって、マメンキサウルス類は恐らくアジアが孤立していた時代に固有の進化を遂げて、ティタノサウルス類が白亜紀になって入ってくるまでは絶滅することもなくずっとそのまま存続していたといえるわけです」