第1回 恐竜から深海魚まで、世界で活躍する若き日本人研究者

カナダ、アルバータ大学。(写真提供:川端裕人)
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 実は、この名前を見た時点でニヤリとした人もいるのではないかと想像する。日本の恐竜ファンの中でもかなりコアな古参は彼の名前を知っている。いや、それどころか、宮下さんのことを自分たちが世界に送り出した「日本代表」とすら思っているかもしれない。かつて猛烈な知的好奇心と早熟の論理能力を持った「恐竜少年」として知られた存在で、14年前、高校生の時に単身カナダへと渡った。以来、テツト・ミヤシタの名が時々聞こえてくると、「がんばれー」と遠巻きながら声援を送ってきた人は多い。

 ぼくにとっては(一部の恐竜ファンにとっても)「あの宮下さん」なのだが、ほとんどの人にとっては初見のはずなので、もうちょっと客観的な指標として論文検索をしてみると、ちょうど10年前の2007年以来、ざっと27報がヒットする。

 2009年の「高緯度地域で子育てをした恐竜」の論文はとてもよく引用されており、「原始的な角竜」、ティラノサウルス類といった名のしれた分類群の恐竜も目につく。「よろい竜の頭の内部構造」では、掲載誌の表紙を飾った。これらはすべて、地元アルバータ州産の恐竜だ。

自分の論文の画像が使われた表紙を手にする宮下哲人さん。(写真提供:川端裕人)
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 近年は活動範囲が広がって、2015年には、「中国雲南省で発見されたジュラ紀後期の竜脚類(首の長いいわゆるカミナリ竜)チージャンロン」があり、2016年には、冒頭で話題にした「琥珀から恐竜のしっぽを発見」(ミャンマー)、「史上最大の海生ワニ」(チュニジア)などが続く。

 かなり精力的な仕事ぶりだ。

 ぼくは、2015年の竜脚類の仕事の後くらいから、ずっと宮下さんの話を聞きたいと思っていたわけだが、今回、願いがやっとかない、きちんとこの連載の場で紹介できる。

 宮下哲人。アルバータ大学生命科学科所属。

 高校1年生の時からカナダに渡り、大学学部生時代に論文デビューして以来、アカデミックな活動を繰り広げ、専門的な業績を積み上げてきた。

 先月(2017年11月)に博士号を取得したばかりで、今後のポスドク期間の所属は、近日中に公表できる見込み。

 博士号取得の直前に、宮下さんが一時帰国した際、港区虎ノ門にあるナショジオ日本版編集部のスタジオにて膝を突き合わせ、また、その後、宮下さんの魂の故郷のひとつである国立科学博物館を訪ねつつ、のべ4時間近くかけて話を伺った。

 最初の話題は、やはり大型竜脚類からいこう。