固有種に返り咲いた小笠原の海鳥

6月、小笠原のセグロミズナギドリが硫黄島の沖を海面すれすれに飛んでいく。翼で水を勢いよく切るような姿から水薙鳥という名がついた。既知の繁殖地が2カ所だけで、絶滅が危惧されている。(写真:JOHN HOLMES/FLPA/amanaimages)
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“日本だけの翼”に新たに仲間入りした鳥がいる。小笠原諸島の森林で繁殖するセグロミズナギドリだ。

 新たな固有種といっても、新たに発見されたわけではない。この海鳥が初めて科学界に登場したのは、100年余り前の1915年。北硫黄島で採取された標本を基に、オーストラリア人と英国人の鳥類研究者が新種として発表した。日本では当初、固有種として分類され、「オガサワラミズナギドリ」と呼ばれていた。

 しかしその後、固有種としての地位が揺らぐ。外見上の特徴から、より広い範囲に分布するミズナギドリ属の別の海鳥と同種だと考えられるようになったのだ。1970年代半ばからは、インド洋や大西洋にも分布するセグロミズナギドリの亜種だとされることが多かった。

 この分類は正しいのか?森林総合研究所の川上和人さんたちは、より科学的な方法で小笠原のセグロミズナギドリの正体を明らかにすることにした。現地の10羽からDNAを抽出し、世界各地のミズナギドリ類と比較。その結果、小笠原の集団は他地域の種とは80万年以上前に分化したと考えられる別系統であることがわかった。回り回って、固有種に返り咲いたわけだ。

小笠原のセグロミズナギドリ
Puffinus bannermani

全長:30センチ
繁殖地:小笠原諸島の東島と南硫黄島のみ
脅威:外来のクマネズミによる捕食や、外来植物による営巣環境の劣化
食性:動物食(魚や軟体動物、動物プランクトン)
豆知識:「オガサワラミズナギドリ」という和名が復活するかはわからない。