高い山の茂みで

7月半ばの乗鞍岳で、ハイマツの枝先に止まったカヤクグリが、鈴の音のような声でさえずっていた。夏が過ぎ、秋の足音が聞こえてくると、山を下りる季節だ。(写真:HIROZO MAKI)
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カヤクグリの地鳴き(1年を通して雌雄が発する鳴き声)を聞いてみよう。(音声提供:松田道生)

カヤクグリのさえずり(繁殖期の雄が発する鳴き声)を聞いてみよう。(音声提供:松田道生)

 カヤクグリは高い山に生えたハイマツなどの茂みで繁殖する。そのことが、この鳥の調査や研究を難しくしている理由の一つだと、長野県天龍村立天龍小学校の教員、松崎善幸さんは言う。「標高2500メートルを超す高山帯なので、登山経験が豊富でないと危険なんです」

 冬山登山の経験があり、乗鞍岳で別の鳥を調査したこともあった松崎さんは、大学院生の時、カヤクグリの繁殖行動を調べることにした。雪が残る春先の乗鞍岳での調査は体力勝負。ハイマツの茂みを何時間探してもカヤクグリの姿や巣はなかなか見つからなかったが、2年をかけて、興味深い生態を突き止めた。

 カヤクグリは複数の雄と1羽の雌からなる群れをつくる。群れの雄には順位があり、上位の2羽が雌と交尾するケースが多かった。抱卵するのは雌だが、孵化すると、交尾した複数の雄が代わる代わる雛に餌を与えにやって来たという。

 カヤクグリの繁殖は一妻二夫を基本とする乱婚的なものだと、松崎さんは考えているが、その理由は謎のまま。「機会を見つけて調べてみたいですね」と松崎さんは話す。

カヤクグリ
Prunella rubida

全長:14センチ
分布:北海道、本州、四国、九州
生息環境:森林、草地、高山
食性:雑食(昆虫、クモ、種子など)
繁殖期:6~9月
豆知識:カヤクグリは室町時代から使われている名前。冬に山から下りてきて、低地のやぶなどに身を潜めるようにいたためと考えられる。