第4回 人のあり方を変えるVRの怖さと大きな可能性

 ひとつは悪用されたら嫌だということ。そして、もうひとつは、むしろぼくたちが、自分が思っている以上に影響されやすいというか、意志すらも「自分の意志ではないもの」によって常に方向付けられていることを自覚させられることだ。ぼくたちが子どもの頃から叩き込まれる「自己決定の原理」みたいなものの足元がゆらぐ。試着室の鏡の例などまさにそういうものだ。

 もっとも、足元がゆらぎつつも、「やっぱりそうだったか」となんとなく分かっていたような気もするので、むしろ、じゃあ、それをいいかんじに使うにはどういう方向性があるのか考えるべきなのかもしれない。

怖いと感じることもあるVRは、どのように使えばいいのだろうか。
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「たとえば、派生的なものですが、遠隔地での会議の研究はどうでしょう。最近はスカイプみたいなものでよく会話したりすると思うんですけど、それでお互いが笑顔に見えるような状況を作ってあげるとどうなるかっていうのをやってみたんです。すると、ブレインストーミングをしたときに、出るアイデアの数がすごく増える現象を発見しました。例えば5分間で新しいレンガの使い方をできるだけいっぱい考えてくださいみたいな、『新しい何とかの使い方』をいっぱい出してもらう課題で、笑顔にすると出たアイデアの数がだいたい1.5倍ぐらい!」

 つまり、お互いが心地よい状態で話をしていると、どんどん盛り上がってアイデアが出しやすくなる。つまり、いい環境を作るとか、相手といい関係だと、自分の能力が発揮できるという話だ。

「こういった技術で他人にコントロールされるのは嫌だけれど、逆に自分自身のために使えればよいのかなと今基本的には考えています。自分でうまくコントロールしていくのにはすごくいいと思うので。それで、この系統の研究で、超現実テレプレゼンスというのにも取り組んでいまして、それはテレビ会議をありのままじゃなくて、嘘でも盛り上がっているように見せて送るんです。すると、こんな盛り上がってる会議だから、自分もいっぱいアイデア出さなきゃと思うかもしれない。対面で会うより、あいつネットごしのほうが輝いてるぞ、みたいな状況が幾らでも作れるなと。そういうのがテレコミニュケーションの1つの可能性かもしれないと思っています」

 さらにもう一点、今回鳴海さんとお話した中で、ぼくが一番心惹かれたものを紹介する。