第3回 やせるVR、泣けるVR、好きになってしまうVR

 感覚を作ってあげると、行動が変わる。

 感覚をハックされるのがVRだとして、その結果、知らず知らずに行動まで変化させられるという部分で、ぞくっとした。こういう技術を誰かにこっそり使われたら怖い。

 しかし、少し考えれば思い至るのだが、ぼくたちは何か行動を起こす時、外界の状況を感覚を通じて理解して、それに基づいて判断をする。だから、感覚に基づいて次の行動を決めているわけで、感覚が変われば行動も変わって当然だ。

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 拡張満腹感の実用面についての鳴海さんの見解はこんなふうだ。

「人は、普段、無意識に食べる量を調整しているわけですけど、その戦略って、我々がサルだったときに、栄養が足りないからできるだけ栄養をとろうというものの名残で、現代の人間にとっては割と不利に働いているわけです。カロリーが多過ぎるわけで。かといって今の状況に合わせて人間が進化するのは難しいので、そこにコンピュータが入ってくれて、カメラで撮った食べ物の画像から、AIがカロリーや栄養を推定して、食べ物ごとに自然と量を増やしたり減らしたりするように仕向けると。そうすると、コンピュータが人に寄生するような形で、結果的に人間が進化したみたいにできるんじゃないかと思っています」

 つまり、拡張満腹感は、人間自体を拡張するという見立てだ。生物としての人間が現状に追いついていない部分を補って、この場合は肥満を防いだりして役立ってくれると想定できる。自覚的、かつ、倫理的に使われる分には、ものすごく役立つ可能性がある。

 鳴海さんが、ちょうどこういった研究を進めいている時期に、もうひとつ、研究の方向を「拡張」する新たな知見が、関連分野の研究からもたらされた。