第1回 最先端のVR研究室で「無限階段」を登ってみた

 見た目は小ぶりの三面鏡だが、中央の鏡は実はモニタだ。カメラに映った自分の顔を、左右反転した鏡像にして呈示してくれる。だから、鏡を覗いているのと感覚的には変わらない。

 ただし、ちょっとだけ細工がほどこされている。自分で操作できるスライダーがあって、それを左右に動かすと映し出される表情が変わる。例えば、左にスライドさせると、口角があがり、頬もあがる。つまり、鏡に映る自分が笑っている状態になる。

「扇情的な鏡」を体験中。中央はモニタの映像で、少し細工がほどこされている。左の普通の鏡と比べると細工の様子がわかる。
[画像のクリックで拡大表示]

 決して、大きな変化ではないのだが、それでも、笑っている自分を見ると本当に自分が笑っているような気分になって、愉快になってくる。心がリフトアップされるかんじ。

 逆に、スライダーを右に動かすと眉がちょっと動いて悲しげな表情になる。それだけで、ちょっと頭の中も曇ってくる。

「映っている自分の表情が変わると感情が変わってしまう。笑顔の自分を見るとどんどん楽しくなってしまうし、悲しい顔を見るとどんどん悲しくなってしまうんです。こういうのを身体化情動といいます。これまで、心拍を聞かせるとドキドキするですとか、緊張感やドキドキする感覚を作るっていう研究はあったんですけど、それって、おばけ屋敷で怖いときにも、好きな人といて楽しいときにも、鼓動は速くなりますよね? だから心拍を速く感じさせるだけではどの感情が起こるかは決まらないんです。それに対して、表情という身体反応は、特定の感情と強く結びついています。だから表情をうまく使ってあげると、狙ったとおりの感情を作ることができる。それも、楽しいとか悲しいとか、基本的な感情を狙って作ることができると分かったのは、結構大きいと思ってます」

「楽しい」「悲しい」という感情を「作る」ことができたとして、それはどんなふうに実験で測定できるのだろうか。ふと疑問に思って、その点を伺った。