第6回 ツシマヤマネコとの共存はリアルな「はてしない物語」

 21世紀のこの時代に野犬? という感じ方はたぶん都市部のみで通用する。羽山さんによれば、日本各地の農村部、山間部では、今、むしろ野犬が増えており、「このままだと、日本中野犬だらけになりますよ」というレベルだそうだ。

「猟師さんたちが高齢化していて、食害をおこすシカもイノシシも、駆除に猟犬を使うようになっているんです。だけど、その犬がなかなか全部回収できないで、山に残っています。猫の感染症について対策している間にシカがワーッと増えてきて、それにあわせて野犬が増えてきて。保護をしているのにもかかわらず、10年たっても回復しないっていうことは、僕は危機的だと思うんですね。この10年はかなり意思統一をして、環境省も地元も動物園も研究者も努力してきました。それで結果が出ないなら、もう次の打開のステージに入るべきだと思います」

 では、次の打開のステージとはなにか。羽山さんの頭にある考えとは?

ツシマヤマネコのしっぽは太く、20~28cmと短めだ。
ツシマヤマネコのしっぽは太く、20~28cmと短めだ。
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「あくまで僕の考えでコンセンサスにはなっていませんが、今の状況なら島内での『移住』ですね。南の下島にヤマネコが見つかってますけど、基本的にオスです。オスの方が広い範囲を動くので放浪して上島から入り込んできているんです。そこで、上島で縄張りを見つけられなくて放浪している若いメスを移動させちゃうのが一番いい。下島の方は、上島に比べて人がたくさんいる地域なんですが、交通アクセスもいいからシカを駆除する人がいるし、上島で放浪するメスはこのままだと子どもを産まないまま死んじゃうかもしれないし。移住させて下島で一刻も早く繁殖させることですよ」

 もっとも、上島にもヤマネコが充分にたくさんいるとは言えないわけで、その中の数頭でも捕獲して移動させるのは問題だという考えもある。その場合は、動物園の飼育下個体群の出番となる。この場合は、ぼくらがイメージする「野生復帰らしい野生復帰」(飼育下で繁殖させて生息地に戻す)になる。