第4回 絶滅危惧種ツシマヤマネコに迫るこれだけの危機

ワークショップの報告書。多くの組織や団体がかかわった。
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 公の機関が主催したのではなく、あくまで市民主導のワークショップだ。

 その上で、「役所」としては、環境省、長崎県、対馬市が共催、林野庁が後援につく万全の構え。日本獣医師会、日本野生動物医学会といった獣医が多く所属する団体はもちろん、日本動物園水族館協会も後援している。実際の参加者も、自治体や国の様々な部局、研究者、動物園関係者、市民グループ、さらには地元の小学生や高校生代表! まで加わっている。

 さらに特筆すべきは、このワークショップ自体、国際機関IUCNの専門家グループのひとつCBSG(保全繁殖専門家グループ。現在はCPSG(保全計画専門家グループ)に改称)によるツシマヤマネコの現状評価と対策のための枠組みで行われていた。絶滅危惧種の保全に通暁した専門家たちを海外から招聘して、世界水準の議論をしようと企図されていた。

 4つに分かれたワーキンググループのテーマは、

  • ツシマヤマネコと共生する地域社会づくり
  • 生息域内保全
  • 飼育下繁殖
  • 感染症対策

 というものである。

 それぞれの分野で、目標を共有し、方策を議論したことで、これらはのちの環境省の保護増殖事業実施方針にも反映された。

 絶滅危惧種ツシマヤマネコの保全は、しっかりした科学的な検討と市民的な合議を経たものとして、パイロットプランとみなされることになった。

つづく

羽山伸一(はやま しんいち)

1960年、神奈川県生まれ。日本獣医生命科学大学教授。博士(獣医学)。1985年、帯広畜産大学大学院修士課程修了後、埼玉県庁を経て同年、日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)に勤務。2012年より現職。日本の大型野生動物の研究および保護活動に従事する。現在、環境省中央環境審議会専門委員、環境省ゼニガタアザラシ科学委員会委員長、特定非営利活動法人どうぶつたちの病院副理事長、公益財団法人日本動物愛護協会学術顧問などを兼務。『野生動物問題』(地人書館)の著書のほか、『増補版 野生動物管理―理論と技術』(共に文永堂出版)、『野生との共存~行動する動物園と大学』(地人書館)など共編著多数。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、『雲の王』(集英社文庫)、NHKでアニメ化された「銀河へキックオフ」の原作『銀河のワールドカップ』(集英社文庫)など。近著は、ロケット発射場のある島で一年を過ごす小学校6年生の少年が、島の豊かな自然を体験しつつ、どこまでも遠くに行く宇宙機を打ち上げる『青い海の宇宙港 春夏篇秋冬篇』(早川書房)。また、『動物園にできること』(第3版)がBCCKSにより待望の復刊を果たした。
本連載からは、「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめたノンフィクション『8時間睡眠のウソ。 日本人の眠り、8つの新常識』(集英社文庫)、宇宙論研究の最前線で活躍する天文学者小松英一郎氏との共著『宇宙の始まり、そして終わり』(日経プレミアシリーズ)がスピンアウトしている。
ブログ「カワバタヒロトのブログ」。ツイッターアカウント@Rsider。有料メルマガ「秘密基地からハッシン!」を配信中。