第4回 絶滅危惧種ツシマヤマネコに迫るこれだけの危機

「ヤマネコが絶滅しかけているという危機意識がないっていうか。むしろ、ニワトリを襲う害獣っていう認識だったんですね。お年寄りの家へ行くと、ヤマネコの襟巻きとかありましたからね。こういう状況で、この種を保護するのは大変だなって。一方で、ヤマネコが少なくなっていることに気づいて餌付けを始めている人もいて、じゃあ何か僕がお手伝いできることないですかって言ったら、結局、環境省が保護増殖事業を立ち上げるのに、専門家の検討会をつくった時、それをお手伝いするようになったんです」

 ツシマヤマネコは「種の保存法」にもとづく国内希少野生動植物種なので、保護や増殖の施策は環境省が中心となる。これは、前にも話題に出た、コウノトリ、トキ、ライチョウもそうだ。とはいえ、対馬の生き物だから当然、自治体にも、地元の人にとっても重大問題だし、ツシマヤマネコの保護を目指す市民団体もある。全国各地の動物園も飼育下繁殖に関心を持っている。ヤマネコをなんとかしたいという部分では同じでも、かかわる立場が多様で、当初はかなり混沌とした状況だったそうだ。

ツシマヤマネコの保全に対する認識はどう変わっていったのだろうか。
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「会議が立ち上がって、関係者が一応集まるわけですよね。それで、みんなそれなりに何かはやってるんですけど、てんでんばらばらでした。個体数を回復させるためには、こういうことが必要なんだから、あなたはこれ、私はこれ、と役割分担していくようなふうでもなくて、みんなが勝手にやってたんですよ」

 象徴的なエピソードをひとつ挙げてもらった。

「例えば、交通事故対策をどうするかというと、役所の道路部局が『ヤマネコ注意』みたいな標識をたてて、あちこち道路標識だらけになるんですよ。でも、それで効果が出てるわけじゃないし。とにかくどうしてそこで事故が起こるのか、原因を究明しなければならないわけです。現場検証やって、もし道路の構造が問題なんだったら、道路の構造を変えるとかね。でも、それをやっていた役人は『そんなお金ありません』というし、じゃあ、結局、どうするんですかってことになります」

 なにかとても想像できる話だ。