第4回 絶滅危惧種ツシマヤマネコに迫るこれだけの危機

 対馬は細長い島で、明治時代に開削された運河により南北に分断されている。北側を上島、南側を下島と呼ぶ。ヤマネコの生息地は、人口密度が低い上島が中心だ。

井の頭自然文化園の解説。対馬は九州と朝鮮半島の中ほどに位置している。
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 ツシマヤマネコが絶滅危惧になった理由は、いくつも挙げられるが、やはり生存に適した生息地がなくなってきていることが大きい。道路の整備や河川改修で行動範囲が分断されてしまいがちなこと。また、管理されていない森林が増え、農地も減ることで、エサになる動物が減ってしまったことも一因だ。

「ツシマヤマネコって山猫というほど山にいないんです。タネコ(田猫)という呼び方もあって、田んぼやあぜ道なんかに出てきたりする。昔は森で焼き畑をしていたので、その環境ではネズミを主食にして森で暮らせたんでしょうが、今はもう焼き畑はしないし、シカが増えて植生が変わって、ネズミも減っちゃったんで、そうすると主食がどんどん魚とか昆虫とか、そっちのほうにシフトしてきちゃったんですよね。でも、水田も減っているし、農薬を使うとエサの生物がいなくなりますから」

「山猫」というほどツシマヤマネコは山にはいないという。
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 ツシマヤマネコは、人間の営みをうまく使って、そのすぐ近くでエサを獲ってきた。そのような性質から、交通事故にあったり、イエネコと接触して感染症をもらったり、罠のトラバサミにかかったり、野犬に噛まれたり、といった事故も起こりがちだ。

 2000年代前半の推定個体数は80から100頭で、2010年代の前半にもほとんど変わらず70から100頭だった。この数字は、なわばりを持った定住個体の推定だ。なわばりを見つけられずにいる放浪個体は入っていない。ツシマヤマネコの個体群が野生で安定して存続するためには、最低数百頭の成熟個体数が必要だとされるし、そもそも、対馬は小さな島なので、常に絶滅のおそれがあるとも言われる。

 さて、こんなヤマネコの調査を2001年に「遊びに来た」がゆえに始めた羽山さんの、最初の感想は「これは大変だなあ」だったそうだ。その理由は、もちろん、ツシマヤマネコの置かれている窮状のせいなのだが、それに加えて、地元での認知度の低さも大きかったという。