第3回 “邪魔者”コウノトリの野生復帰はなぜ成功したのか

 いい意味で手のひらを返したような盛り上がりだったという。では、かつて「同じ税金を使うならもっと別のことを」と言っていた人たちはどうやって納得したのだろうか。「農薬を使わない水田」は、コウノトリの郷のイメージを全面に出した無農薬栽培のブランド米を作ることで解決したようなのだが、それにもまして別の要素があると羽山さんは言う。

野生復帰に成功したコウノトリはいまでは地元の「プライド」になった。(写真提供:豊岡市)
野生復帰に成功したコウノトリはいまでは地元の「プライド」になった。(写真提供:豊岡市)
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「何でしょうね。プライドじゃないですか」と。

「どこの出身ですかって聞かれて、豊岡だって言ったときに、『ああ、コウノトリの』ってでてきますよね。野生復帰したコウノトリの繁殖は豊岡では2007年から成功していて、12年には放鳥3世が誕生しています。今、豊岡以外でも、だんだん繁殖するようになってきていて、そのたびに豊岡コウノトリの郷公園が取材されるんですよ。そういったときにプライドを感じるんじゃないですかね」

 コウノトリの郷としてのプライド!

 プライドという言葉を、今回の取材の中で耳にするのは二度目だ。

 一度目は、野生復帰のツシマヤマネコの飼育を担当し、人工繁殖の技術を確立しようと意気込む飼育員の唐沢瑞樹さんだった。唐沢さんのプライドは、国産の希少種であるツシマヤマネコの飼育を担当することについてのものだった。そのことと、羽山さんが口にした地元の人たちの「プライド」は関係しているのだろうか。

 とにかく、地元の「プライド」となったコウノトリは、以降、順調に数を殖やしている。各地で放鳥を続け、野生で繁殖する地域も増えてきた。今後はどんな方針を取っていくことになるのだろう。

井の頭自然文化園でツシマヤマネコの飼育展示係を務める唐沢瑞樹さんも「プライド」を熱く語っていた。
井の頭自然文化園でツシマヤマネコの飼育展示係を務める唐沢瑞樹さんも「プライド」を熱く語っていた。
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