第3回 “邪魔者”コウノトリの野生復帰はなぜ成功したのか

「僕がかかわり出したのは、1999年、兵庫県立コウノトリの郷公園が豊岡市にできたときです。野生復帰に向けていろんな検討をする専門家会議を立ち上げるので参加してくれと。その時点では、飼育下のコウノトリはかなり増えていました。豊岡には絶滅前から飼育施設があったし、動物園でも飼っていましたから。じゃあ野生復帰を視野に入れようということになって、2005年に試験放鳥することを計画しました。それまでに6年あるんで、どういう準備をしていけばいいか議論したわけです」

 野生絶滅してから30年以上を経てふたたび放鳥するためには、はたしてどんな準備をすればいいのだろうか。

 まず、飼育下でエサをもらっている環境から、自らエサを探し、狩り、食べる野生の生活に順応できるような訓練が必要だ。これまで野生での生活をしたことがない個体だから、傷病で保護したものを野に放つよりハードルが高い。自然に近い環境を飼育下でも経験してもらい、採餌の仕方や、巣の作り方などまで、慣れてもらう。

左の森のすそにある施設が兵庫県立コウノトリの郷公園。水田などを主な餌場にするコウノトリはまさに「里の鳥」だ。(写真提供:豊岡市)
左の森のすそにある施設が兵庫県立コウノトリの郷公園。水田などを主な餌場にするコウノトリはまさに「里の鳥」だ。(写真提供:豊岡市)
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 一方で、放たれた外の世界が、訓練の成果を活かせないほど厳しいものなら、元も子もない。いったん野生で絶滅に至った原因をさぐって取り除いておかないと、すみやかに「二度目の野生絶滅」になってしまうだろう。たとえば、農薬を使わずにドジョウやカエルなどが多く棲んでいる水田は、コウノトリにとって望ましい。だからといってその負担を農家に一方的に負ってもらうのは酷だ。どう解決すべきか……。

「当初は、まだ、一部の野生復帰推進派の人たちで準備しているかんじでした。それで、地元の商店街とかで聞き取り調査をやりましたけど、するとみなさんほとんど否定的なんですよ。田んぼの稲を踏み倒しちゃうというイメージがあって、年配の方は、子どもの頃、コウノトリを見たら石を投げていたような記憶があると。税金を使うくらいなら他のことやってよみたいな人も多かったです。だから町の雰囲気づくりがすごく大事で、市民団体の人が頑張ってずいぶん変わってきたんです。2005年の放鳥のときには、3000人来ましたからね。それこそ小学校とか幼稚園とか、みんな休みにして見に来ていたのが印象的でした」