第2回 絶滅危惧種の「野生復帰」とはどんな取り組みなのか

 他にも代表的な野生復帰計画について。

 北米のプレーリー(草原)に暮らすクロアシイタチは、プレーリードッグを捕食することに特化した肉食獣で、プレーリードッグが害獣と見なされて駆除される中で絶滅の危機に瀕した。ゴールデンライオンタマリンよりも少し遅れて1991年から野生復帰が試みられている。現在も毎年、数百頭レベルで繁殖させて、野生に放ち続けているのが印象的だ。計画のウェブサイトによると、再導入サイトは米国ワイオミング州、モンタナ州、コロラド州、サウスダコタ州などに28カ所ある。ゴールデンライオンタマリンのように野生の個体群が安定して、人間の側は生息地を守ることに注力するというところにまで達していない。

「僕も実際、繁殖センターの現場を見に行ったことがありますけど、あれは生産工場に近いですよ。彼らはもともと非常に死亡率も高いので、たくさん放して、それで集団を確立しなきゃいけないんです。だから、だいたい年間400~500頭繁殖させて、それで集中的に野生復帰させていってます。肉食動物なので、エサになるプレーリードッグがいないと生き残れないし、プレーリーの生態系とセットで保全しないと意味がありません。やはり生態系の復元が大切です」

 四半世紀以上にわたって野生復帰の努力が払われ続けていることは特筆すべきことで、生態系の復元について固い意志があるということなのだろう。

 カリフォルニアコンドルは、翼を開くと幅2.7メートルにもなる巨大な猛禽類で、野生ではほぼ絶滅したものを全羽捕獲して、サンディエゴ動物園やロスアンゼルス動物園で繁殖させて、野生に戻している。2016年時点での報告では、今野生で暮らしているのは276羽。

カリフォルニアコンドル。米サンディエゴ動物園で撮影。(写真:川端裕人)
カリフォルニアコンドル。米サンディエゴ動物園で撮影。(写真:川端裕人)
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「本当にこれから、何事もなく回復できるのかっていうのは分かりません。大型の猛禽類って、とても広い範囲で生きているので、生息地の回復といっても大変なんです。日本だったら九州丸ごととかそういう規模になってしまうので。最近、ハンターが撃ち殺した動物の肉を食べることから鉛中毒になる問題も出ているし、これってもしかしたらエンドレスな取り組みになるかもしれないです。でも、やり続けているからこそ、少しずつでも生息地が回復できるんであって、その点ではあきらめずにやり続けているんでしょう」

 中には、残念な結果に終わってしまうこともある。アラビア半島を中心に分布する偶蹄類アラビアオリックスでのとある事例だ。