第1回 絶滅危惧種ツシマヤマネコに会ってみた

 その言葉の通り、しばらくあたりを探索して、ひょいと高いところに登ったあたりで、ようやく動きが落ち着いて、しっかりと姿が見えた。

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「猫」である。

 ネコ科だからそれは間違いないのだが、素のままで「猫」という言葉が出てきた。

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 同じネコ科でも、ライオンは「ライオン」でトラは「トラ」だ。ぼくは自然とそのように感じる。しかし、ツシマヤマネコの初見の印象は「猫」なのである。つまり、日常的に接触するイエネコにとても似ている。

 でも、ちょっと違和感がある。似ているようで、イエネコとは違う。

 言葉にするなら、まず普通のイエネコよりは大柄で、胴長短足の体形。尻尾も短めだ。額に縞模様がはっきり出ており、耳の後ろには白い斑点がある。

 ヤマネコだと知らなかったら、風変わりなイエネコだと思う人もいるかもしれない。それでもしばらく見ていると、短い足や尻尾に力強さを感じ、ああ、この子、やっぱり野生動物なのだなあと思う。その一方で、ちょっととぼけた顔つきは、かわいらしくもある。そんな絶妙な魅力のあるネコ科動物だ。

絶妙な魅力のある「猫」だ。
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「隣にアムールヤマネコの展示がありますけど、ごらんになりました? キャットタワーといって木材を組んだ櫓(やぐら)のようなもので立体的に動き回れるようにしているんですけど、ツシマヤマネコの方は対馬にある自然を少しでも感じてもらえるようになるべく自然に近い形にしてあります」

 これは、動物園での動物の見せ方に関わる問題だ。井の頭のアムールヤマネコの場合は、立体的な動きができるように櫓のような人工的な構造物を入れている。一方、ツシマヤマネコは本来の生息地に近い景観の中で見せるという方針だそうだ。だから、笹の藪があり、小川がある。そして、ちょっと高くなったところに登ることができるようにもなっている。

「実は、動物園に来てツシマヤマネコをはじめて見た人って、対馬にヤマネコがいるのかって驚くんです。それどころか、対馬ってどこっていう人もいます。イリオモテヤマネコは知っていて、場所も沖縄だっていうのはわかってるんですけど、対馬は場所すらわからない。ですから、私がガイドする時なんかに強調するのは、日本のヤマネコには、イリオモテとツシマの2種類がいるってことと、対馬の場所も覚えてくださいってことです。すると『夏休みに対馬に行ってきました』なんて人がいて時々後で報告しに来てくれるんですよね」