第1回 絶滅危惧種ツシマヤマネコに会ってみた

井の頭自然文化園の正門。
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 羽山さんとの待ち合わせ場所は、東京都武蔵野市と三鷹市にまたがる井の頭自然文化園。日本全国でツシマヤマネコがいる9つの動物園のうちの1つで、オス・メス2頭ずつ、計4頭を飼っている。そのうち3頭は、飼育下で生まれたものだし、今から対馬の森に戻ることは想定しがたいけれど、子どもの世代が野に放たれることはありえる。近未来の可能性に思いを馳せつつ、「野生復帰」にまつわる様々なことをうかがう趣向だ。

 まずは約束の時間よりも早く動物園を訪ねて、飼育展示係の唐沢瑞樹さんに、飼育されているツシマヤマネコの様子を見せてもらった。朝一番の時間帯だったので、奥にある寝室から表の放飼場に移動してくる瞬間から待ち構えた。公開されているのは、4頭いるうちの1頭。高齢のメスだ。

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 ゆっくりと扉は開いた。

 さーっと、影が横切った。

 姿をしっかり確認できなくらいの素早い動きだった。

「彼女は、用心深いんですよ。飼育下で生まれたんですが、今うちにいる4頭の中でも一番、用心深い性格ですね」

ツシマヤマネコの飼育展示係を務める唐沢瑞樹さんが解説してくれた。
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 唐沢さんが解説してくれた。唐沢さんは、多摩動物公園でライオンやチーターなどの大型ネコ科動物を担当した後、井の頭自然文化園に異動になって、この3年間ずっとヤマネコの担当をしている。ネコ科動物飼育の経験が豊富だ。

「ツシマヤマネコって、人との距離感を必ず保つ傾向があるんですけど、その中でも慎重な個体です。朝、外に出たら、まずまわりの状況を確認したり、においを嗅いだりして歩きまわって、それからちょっと高いところに登って見渡したりしてからやっと安心するみたいですね」