もはや海の珍獣図鑑! 16世紀の「カルタ・マリナ」

■オオウミヘビ

「200フィート(60メートル)はありそうな巨大な体を持つヘビがいる。太さは20フィート(6メートル)を超え、ベルゲの海岸付近の岩礁や洞窟にすむ。首から1キュービット(50センチ弱)ほどの長さの毛を垂らし、ウロコは鋭く、色は黒い。その眼は燃えるような光を放つ。このヘビは船乗りたちを恐れさせ、柱のように高く頭を持ち上げて人間をつかまえ、食べてしまう。しかし、それが起こるのは、近くにある王国に大きな変化が迫っているときに限られていた。オオウミヘビの出現という前触れの後には、王子が死んだり、追放されたり、あるいは大きな戦争が起こったりしたという」

 これは、もともとノルウェーに伝わる大蛇の紹介だった。おそらく、北欧神話に登場する蛇の怪物ヨルムンガンドの影響を受けていると思われる。ヨルムンガンドは海の深さよりも大きく成長し、ついには世界を丸ごとぐるりと取り囲むほどになったという。

■ウミブタ

「私自身も1537年に目撃したこの怪物のような海のブタは、ゲルマン海のいたるところを泳いでいる。ブタの頭を持ち、後ろから見ると月のように丸く、4フィート(1.2メートル)ほどある後頭部は竜のようだ。胴体の両側に目が2つずつあり、へその位置を示すような第3の目が腹についている。尾は普通の魚と同じくギザギザしながら二股に分かれている」

 オラウスはこの海のブタについて、古代ローマの博物学者プリニウスの観察記録をそのまま引き継いでいる。プリニウスは「豚魚」がつかまるとブタのように鳴くと記した。セイウチを脚色した可能性が高いと思われる。

■ポリプス

 この巨大なウミザリガニはポリプスと呼ばれる。船乗りや泳いでいる人間をつかまえ、非情にも食べてしまう恐ろしい怪物だ。ポリプスは体の色を変えて周囲と同化することができ、最も恐れる敵であるアナゴから逃れるためにそうする場合もあるという。

「まるで海水など存在しないかのように自由自在に足を伸ばし、血に飢えたギザギザのハサミを使って、近くに来たあらゆる生き物をつかむ。どんな獲物でも、自分がすむ穴の中に溜め込んでいく。それから皮をはぎ取り、肉を食べ、獲物に群がってくる魚も捕まえる」

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