そしてきわめつけは、ささやかな金を出せばその楽園の一部が自分のものになるという点だった。「たったの2シリング3ペンスでポヤイス国の土地1エーカーがあなたのものになります」とマグレガーは聴衆に語りかけた。11ポンドちょっとの金をかき集めれば、100エーカーもの土地が手に入るわけだ。イギリスで暮らす金額に比べればわずかな金で、王族並みの暮らしができるかもしれない。肉体労働などはできないという「高貴」な方々には、最高額入札者のみが就任できる名誉ある役職が用意されている。

グレガー・マグレガーがスコットランド銀行の印刷機を使って作ったポヤイス銀行の1ドル札。
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 マグレガーのポヤイス国の話に世間の人々は飛びついた。モーガーという名の銀行家は、ポヤイス銀行頭取への任命状をもらって大喜びした。とある靴屋はポヤイス王女御用達の靴屋に決まったという知らせを妻に伝えるために家に飛んで帰った。若い息子のいる家は、彼らをポヤイス国の陸軍や海軍の将校にする権利を買い取れないものかと腐心した。

完璧に練り上げられた計画

 しかし、マグレガーの素性も、ポヤイス国の話も、すべて嘘だった。マグレガーは知性的で、弁が立ち、人を惹きつける魅力があり、富と名声と上流階級への仲間入りを強く望んでいた。そんな彼にポヤイスへの入植希望者たちは全財産を差し出した。マグレガーの計画は完璧に練り上げられており、皆がひとたまりもなく騙されてしまったのだ。

 1822年9月10日、期待に胸をふくらませた70人の乗客と、十分な補給品と、スコットランド銀行の印刷機で刷られた(向こうで金や法定通貨と交換できるはずの)ポヤイスドルがいっぱいに入った金庫を乗せて、ホンジュラス・パケット号はポヤイス国に向けてロンドンの港を離れた。

 ポヤイス国行きの船を見送ったマグレガーは、その足でエディンバラとグラスゴーに行き、今度はスコットランド人を相手に同じ話をした。マグレガーはスコットランド人で、愛国者として身を挺して戦ってきたうえ、実に話術が巧みだった。2度目の募集でもポヤイス国の土地は完売し、移住地に向かう船は今度も満員になった。1823年1月14日、200人を乗せたヘンリー・クラウチ船長のケネルスレー・キャッスル号は、ホンジュラス・パケット号で一足先に新天地に向かった人々と合流すべく、スコットランドのリースの港を後にした。

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