第5回 私たちは今どのように嘘と付き合えばいいのだろうか

「あんまり本当、本当って言うとかえって本当から遠ざかるみたいなことをブッダは言ったとされますよね。実際にブッダの言葉の本を見ると、私が見た感じではちょっと違っていたのですけれども、今の世の中を見ているとこの言葉を思い出すことがあります」

 嘘をつくというのは、一般に悪いこととされるが、にもかかわらず、正直さを追求すると、嘘が巧妙化したり、分かりにくくなって、むしろ本当のことから遠ざかってしまうというのは、永遠のジレンマかもしれない。

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「──今、この社会で『嘘力』が低下している、弱まっていると感じています。国会で正義の味方みたいに嘘を暴くようなことってあるじゃないですか。でも、私、何の正義でもないのではと思うわけです。相手の嘘を正義の名のもと糺弾する人っていうのは、一見、高潔なんですけれども、何か違和感があって。嘘が分が悪い世の中になりすぎているし、正直礼賛にもほどがある。月に1回エイプリルフールがあってもいいくらいです。こういうことを言いながら、自分も含めて嘘を暴きたいという欲望もあるわけで、アンビバレント」

「──インターネットにおける嘘って、各自の良識の問題として『ネチケット』といったことが語られた時期もありますが、今では聞きませんよね。匿名性がある限り、もう駄目だと思っています」