第4回 嘘を見破る4つの方法とその精度

 以上、ざっと様々な検知法を概観してみた。

 ポリグラフ、脳波(P300)、fMRIは、隠匿情報検査という同じ枠組みで実験できるので、たがいに比べやすい。同じ刺激をあたえて、その時に注目している指標が、生理反応か、脳波か、脳の中の賦活している部位か、といった違いだ。

 さて、それぞれの指標は、どの程度の「優秀さ」なのだろうか。村井さんの関わった「カードテスト」を使った研究を紹介する。

「37名の実験参加者をランダムに18名と19名のグループに分けました。前者には5枚のカードから1枚を選んでもらう『カードテスト』を実施し、後者には実施しませんでした。このカードテスト実施群、非実施群をはたして区別できるのか、fMRIで検討したわけです。結果、83.8%の人について、どちらの群か当てることができました。一般に、正答率は、ポリグラフだと8~9割くらいで、P300だともうちょっと高いですね。だいたい機械を使う方法での正答率の上限は9割程度だと考えればよいと思います」

 人間が相手の行動を観察して嘘とマコトを判定するのは、5割を超えるくらいがやっとであるわけだが、言語分析をするとちょっと正答率が上がるし、ポリグラフ、脳波計、fMRIなど機械を注意深く使うとよくて9割くらいまで上がる(必ずしも嘘発見ではないが)。きっと、犯罪捜査などには役立つに違いない。しかし「絶対」ではないことには充分に気をつけなければならない。専門家は分かっているはずだが、アマチュアも、こういった科学的な手法に過剰な期待を抱き、絶対視するのは避けなければならない。なにごとも割合や頻度を考えることが重要だ。

 ぼくたちは、「嘘を見破るのが下手」な"poor lie detector"であり、機械を使うと嘘検知の割合は高くなるけれど、それでも、現実的にはたくさんの誤判定がある。「本当のことを言っている人を嘘つきと判定する」ことは、しばしば取り返しのつかないことにつながる。

 嘘研究の大家の一人、エクマンの金言を村井さんは紹介してくれた。

〈われわれは嘘をつけるし、真実を語りもする。また、欺瞞を見抜き、見落としたりもする。ごまかされたり、真実を知りもするのである。われわれにはいろいろな側面がある。これこそが人間の真の姿なのである〉

「真の姿」を理解して謙虚にやっていくのがよいのだろうと、ここまでの時点で感じることしきりである。

エクマンは『暴かれる嘘』を著し、海外ドラマ「Lie to me 嘘の瞬間」のアドバイザーも務めた嘘研究の大家の一人だ。
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つづく

村井潤一郎(むらい じゅんいちろう)

1971年、東京生まれ。文京学院大学人間学部教授。博士(教育学)。東京大学教育学部 教育心理学科卒業。東京大学大学院教育学研究科 総合教育科学専攻 教育心理学コース博士後期課程修了。2001年に文京女子大学(2002年より文京学院大学に名称変更)の専任講師に就任し、助教授、准教授を経て、2009年より現職。主な編著書に『嘘の心理学』(ナカニシヤ出版)『心理学の視点~躍動する心の学問~』(サイエンス社)、主な訳書に『嘘と欺瞞の心理学 対人関係から犯罪捜査まで 虚偽検出に関する真実』(福村出版、共訳)などがある。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、『雲の王』(集英社文庫)、NHKでアニメ化された「銀河へキックオフ」の原作『銀河のワールドカップ』(集英社文庫)など。近著は、ロケット発射場のある島で一年を過ごす小学校6年生の少年が、島の豊かな自然を体験しつつ、どこまでも遠くに行く宇宙機を打ち上げる『青い海の宇宙港 春夏篇秋冬篇』(早川書房)。また、『動物園にできること』(第3版)がBCCKSにより待望の復刊を果たした。
本連載からは、「睡眠学」の回に書き下ろしと修正を加えてまとめたノンフィクション『8時間睡眠のウソ。 日本人の眠り、8つの新常識』(集英社文庫)、宇宙論研究の最前線で活躍する天文学者小松英一郎氏との共著『宇宙の始まり、そして終わり』(日経プレミアシリーズ)がスピンアウトしている。
ブログ「カワバタヒロトのブログ」。ツイッターアカウント@Rsider。有料メルマガ「秘密基地からハッシン!」を配信中。