第4回 嘘を見破る4つの方法とその精度

2)いわゆる嘘発見器(ポリグラフ)

「嘘発見器っていう言葉を使う時には、必ず『いわゆる』ってつけたほうがいいと思いますよ」と村井さんは最初に釘を刺した。

 というのも、日本におけるポリグラフ検査では、そもそも嘘を発見していないからだ。実際の心理学では「嘘発見器」という言葉は使われない。呼吸や脈波(血管内の血流量の変化)、皮膚電気活動といったいくつかの生理的な指標を同時に記録するという意味では「ポリグラフ検査」だし、また、嘘を検出しているわけではなく記憶を問題にしているという意味では「隠匿情報検査」(CIT : Concealed Information Test)だ。あるいは「有罪知識検査」(GKT : Guilty Knowledge Test)と呼ばれたりもする。

「隠匿情報検査」というものは、一般にはあまり知られていないと思うので、解説をお願いした。

「たとえば──実験的な状況で言えば、お金を、カバン、ジャケット、バケツなどのどこかに隠してもらい、その後、工夫した質問をいくつかしていって、その質問への反応を見ることでどこに隠したか当てるというものです。各自好きなところに隠して、本人しか知らない事実が心の中に形成されるわけです。嘘ではなくて記憶のテストをしていると考えてください。テレビなどでは、『すべていいえと言ってください』というやりかたを見ますが、結果は『はい』でもほぼ同じになります」

 嘘を検知しようとするのではなく、心の中にある記憶のかけらを検出しようとしている。そんなイメージだろうか。

 後で詳しく述べるが、ポリグラフでの嘘の検知は、条件が整うと8割を超え、行動観察の「5割よりはちょっとよい」と比較してかなり好成績だ。

 キモはこの時の質問の作り方だという。検査を受ける人だけが知っているかもしれない情報(事件なら犯人のみが知りうる情報)についての質問を「裁決質問」として、他の質問の時とは違う生理反応が出るかどうか見る。たとえば、強盗事件で盗まれたものの中に腕時計があったとする。もしも、捜査側と真犯人しか知らない情報であれば、「腕時計」についての質問が裁決質問になりうる。ただし、マスコミが腕時計が盗まれたと報じてしまうと、その後は視聴者なら誰でも知っている情報になってしまうから、裁決質問にはなりえない。

「嘘発見器」というキャッチーな呼び名のせいもあってか、このテーマには様々な神話がこびりついている。より正確な理解をしたい人は専門書や論文をあたった方がいい。

 ひとつ、個人的に気になるので追記しておく。「ポリグラフ=嘘発見器」のような理解をしている人がいるかもしれないが、それは歴史的ないきがかりでそうなっているだけで、本当はちょっと意味の範囲がずれている。もともとポリグラフは複数の生理的な指標を同時に記録することを指しているわけで、病院の集中治療室の生体情報モニターも、睡眠時無呼吸症候群の疑いがある時につけて眠るモニターも、間違いなくポリグラフだ。