第4回 嘘を見破る4つの方法とその精度

 そこを村井さんに詳しく教えていただこうと思ったのだが、やや別系統の疑問が頭に浮かんだ。

 メディアに登場して堂々と事実に反することを言う人がいる。さきほど例に出したアメリカ大統領選挙の後、トランプ氏の就任式の際、大統領報道官は初の公式会見で、「就任式の観衆としては間違いなく過去最大だった」と事実に反することを述べた。報道官を擁護する立場からは、「これはオルタナティヴファクトだ」(代替え的な事実、もう1つの事実)であるというシュールな言葉まで飛び出した。

 我々が、嘘を検知するのは下手だということはすでに分かっているにしても、逆に嘘が上手な人というのはいるのだろうか。あるいは「嘘をつく技術」というのはあるのだろうか。いったん嘘をついたあとも堂々としていられるのはどんな心理なのだろう。そういった素朴な疑問である。

文京学院大学教授の村井潤一郎さん。
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「うーん」と村井さんはうなった。

「これまでの研究で多いのはやはり嘘を見破る方法の研究で、逆に『嘘をつく技術』ということを明示的に打ち出した研究はないと思います。でも、ごく少数の人がとても嘘がうまいっていう話はあって、そういった人たちはどういう人なのかという研究ならあります。自然な行動が疑いを和らげる人とか、嘘をつくことに認知的困難さを感じない人とか、嘘をつく時に恐怖とか罪悪感とかだます喜びを経験しない人、という3つの基準が関連します」

 これは前回にも登場した嘘研究者、ヴレイらの“Good liars“というタイトルの論文で述べられていることだという。

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 嘘をつく時に喜びを経験しない、というのはなかなか意外だが、言われてみるとなるほどと思える特徴だ。嘘をつく時には、「だます喜び」(duping delight)のようなものがあって、テンションが上がる人がいるのだとか。テンションが上がらないことが大事、というわけだ。

 ほかにも、「自然な役者である」「準備が整っている」「創意に富む」「素早く考える」「雄弁である」「記憶が優れている」「演技がうまい」といった特徴が挙げられ、ここだけだとたいそうポジティヴな評価のようにも思える。いずれにしても、実験に基づいた定量的な議論ではなく、理論から特徴を導出した段階にある。

 この件と、「オルタナティヴファクト」を駆使する人たちの間に直接の関係があるのか確信はないけれど、記しておきたい。